第60話 王都のお嬢様
俺たちは今、王都に向かってゴーレム馬車こと軽ワゴンを走らせている。
同乗しているのは、シャルやエリー達そして絵美さんの7人。
軽ワゴンに7人は多いかと思うが、
ゴーレム馬車はエンジンなどを積んでいないので、人が乗れる場所が確保できている。
「それにしても、こっちの世界で車に乗れる日が来るなんて…」
俺は運転しながら、絵美さんの呆れながら言った言葉に
「ダメでしたか?」
「いいえ、でもこの雨の中を行くならこれでいいのかな」
俺は運転席から、窓の外を見て
「朝起きたら、降っていましたからね…」
この世界に天気予報なんてない。
そんな魔道具なら誰かが作ったのかもしれないが、俺は見たことがないな。
雨の降る街道を、車を走らせながら俺たちは王都へ向かう。
2日かけ、いまだ降っている雨を睨みながら俺たちは王都にたどり着いた。
何か雨とともに移動しているみたいだ。
王都についた俺たちは、ジェシカさんの指定した場所に車を走らせていた。
雨の中歩きたくないから、車での移動を選択したが
正解だったかもしれない。
王都の町中に人がいない。
いや、ちらほらと見かけるが町中を車で走れるほど人がいない。
雨で、外に出てこないのかと思ったが違うみたいだ。
食事をとるため、食堂兼宿の主人に聞いたところ
今王都ではある噂が流れているらしい。
それは『西側の貴族たちが王都に攻め込んで反乱を企てている』とか。
その証拠に、西側の貴族たちの屋敷はもぬけの殻なのだとか…
さらに、王様以外の家族が疎開したという噂も流れているそうだ。
どうもこの国で、よくないことが起きているなと感想をもらしたら
食堂兼宿の主人は、それで人が王都から出て行っているのだと。
残っているのは、ギルドの人間と商人とスラムの人間ぐらいだと笑っていた。
それにして、ポーション不足に始まり今度は反乱の噂…
王都は大変な事態に直面しているのかもな……
絵美さんやシャルたちと話し合ったが、今俺たちができることはないとの結論で
目的通り、絵美さんの依頼とジェシカさんの依頼を完遂することにした。
で、ジェシカさんの言っていた目的の場所に来た。
ここは、王都南門の近くにある商店。
売っているものは、旅に必要なものが主だ。
俺たちは車を降りて、車をアイテムボックスにしまい店に入る。
店に入ると、きれいに並べられた旅グッズが目を引く。
小さくコンパクトに収納できるようになったテントの魔道具。
料理道具を入れてコンパクトに収納できる料理道具専門の無限収納箱。
冷蔵機能の付いた食糧専用の収納箱などなど。
旅に必要な魔道具がきれいに展示して並べてある店内は、
好感が持てるほど掃除が行き届いている。
そして、店の奥のカウンターで紅茶を飲む女性が一人。
「あら、ようやく来ましたのね」
…お嬢様だよ、どこからどう見てもお嬢様ってやつだ……
紅茶を飲む姿が、様になっている。
銀髪で、髪はロングの少しドリルが入っている。
服は黒のコート、その下に動きやすい軽装の服だ。鎧はつけていない。
腕に魔道具らしき腕輪を両腕に付け、見たところ指輪は両手に6つ付けている。
いかにもな魔法使いな感じだが、杖などの武器は持ってないようだ。
「あの、ジェシカさんの言っていた人はあなたですか?」
女性は紅茶のカップを置き、立ち上がると
「ええ、わたくしがお願いした『グレース・フォールド』よ。よろしくね」
…お嬢様だな。間違いなくお嬢様の態度だ。
「えっと、一条恭也です。こっちは…」
「待ちなさい!わたくしたちは南の迷宮都市へ行くのよ? 時間が惜しいでしょ。
自己紹介なら道中でもできるわ、まずは出発が先じゃなくて?」
な、何か説得力あるな、このお嬢様。
シャルたちも絵美さんも、唖然としているがここはお嬢様に合わせるか…
「そ、そうですね。では行きましょうか」
俺たちが店の外に出て行くと、お嬢様は店の奥に向かって
「セバス、この店のことはお願いね。何かあったらお父様にお願いして」
すると、店の奥から初老の執事さんが出てきて
「畏まりました。あとのことはお任せくださいませ、グレースお嬢様」
いたよ。これが執事だなって人が……
店の外に出ると、雨がやんでいたが曇り空なのは変わらなかった。
また振り出す前に出発しようと、南門へ歩き出す。
「あらあなたたち、歩いて迷宮都市までいくつもりなの?」
「いえ、馬車を南門の外に用意してありますので」
お嬢様は、少し考えてため息を吐いて
「まあ、いいでしょう。もしもの時はわたくしが馬車を用意するわ」
そういって、俺たちについてくる。
しかし、お嬢様の店、南門から本当にすぐ近くにあるんだな。
店から南門まで1分かからなかった。
南門の門番に挨拶をして、何ごともなく門の外に出るとお嬢様が馬車を探している。
「ちょっと、何もないじゃない…
あなた名前なんて言ったかしら……そう、恭也さんとか?
どこに馬車があるのです?」
俺はお嬢様をなだめながら
「まあまあ、これから出しますから。落ち着いてください」
「あら? あなた、アイテムボックス持ちですの? なら魔法使いなの?」
「ええ、まあ…」
俺は苦笑いをしながら、アイテムボックスから『ゴーレムバス』を取り出す。
ドンと目の前に現れた『ゴーレムバス』
これにはお嬢様も、驚きを隠せなかった。
「じゃあみんな、これに乗ってくれ…」
皆が乗り込む中、絵美さんとお嬢様が目を見開いて驚いている。
「「な、何よこれ~~~~~!!」」
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