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魔法使いのおじさん  作者: 光晴さん


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第59話 勇者からの依頼 2





「デ、『デビルロード』ですって!」

ジェシカさんの驚いた声が、部屋に響く。


「あの、ジェシカさん。『デビルロード』って魔物ですか?」

俺の質問で少し冷静になったのだろう、倒した椅子を戻し座り直す。

「…ごめんなさい。

恭也さんは迷宮に行ったことはなかったよね?」


「はい、この世界に召喚されてから一度も行ったことはなかったです」

ジェシカさんは、一回頷くと

「魔物の中にはね、迷宮の中だけに出てくる魔物がいるの。

中でも『デビル系』の魔物は迷宮やダンジョンにも見出てくるのよ」


「それなら、もっと奥には『魔王』もいるんですか?」


ん? 質問がおかしかったかな、ジェシカさんがキョトンとしている。

「あー、恭也さん。

私たちの認識と、この世界の認識は違うのよ?」


「えっと、どういうこと?」

「まず、『魔王』っていうのは魔族の王ってこと。

8人の魔王は、魔大陸において力や魔力が拮抗しているから8人もいるのよ」


「へえ~、そうなのか…」

「それから『デビル系』の魔物は、

私たちの認識では『悪魔』ってことになるけど、呼び方が違うのよ。


デビルの下がデーモンで、デビルの上がサタンって呼ばれているのよ。

ロードっていうのは格みたいなものね、


だから『デビルロード』はデビル系統の最高位ってことになるわ」

俺は、その説明に感心して聞いていた。

「それじゃあ『サタンロード』ってのもいるのかな?」


「ええ、いるわよ。

今話した『デビルロード』を迷宮で見たなら、迷宮核の傍で守護しているのは

『サタンロード』で間違いないでしょうね」


俺たちの話を聞いていたジェシカさんが、考え込み始めた。



「それで、勝君たちを助けるって話だけど…」


「そう、それなんですけど、迷宮都市の迷宮はかなり深いらしくて

迷宮の中に階段がいくつもあって、上ったり下りたりを繰り返していたんですが


入り口の階から、階段を7つほど降りた場所で『デビルロード』の目撃があり

私たちも警戒しながら進んでいたんです。


ところが、さらに階段を降りようかという時に罠が発動してしまい、

しかもそれが『転移系』の罠だったものだから、私たちのパーティーは

バラバラに飛ばされてしまったんです。


私の飛ばされた先は1階の入り口近くでした。

すぐにみんなを探すべく、迷宮を進もうと思ったんですけど

私と同じように転移してきた人が何人か見つけまして、


その人たちと情報をやり取りしたことでわかったんですが、

7階下にある転移の罠は、

迷宮に挑んでいるすべてのパーティーがかかっているそうで、


しかも、その罠にかかるとどこに飛ばされるか分からず発見が困難になるそうです」


「それでも、捜索はしたんだね?」

「勿論です。残っていた勇者や異世界人を総動員して捜索しました。

でも見つからなかった…」


「う~ん、それで俺に?」

「はい、勝さんが言っていたんです。

『ナルバ村』にいる一条恭也さんなら、どんな相談にものってくれるって」


絵美さんが、俺を縋るような目で見ている…

そんな目で見られると、断れないな…

それに同じ日本人の捜索だし、やってみるか…


「……わかったよ、捜索に協力するよ」

絵美さんの表情が、ひときわ明るくなった。

「あ、ありがとうございます!」



「…恭也さん、王都に行ってほしいんだけど」

今まで考え込んでいたジェシカさんが、俺にお願いしてきた。


「えっと、絵美さんの…」

「ええ、彼女の依頼を受けるためにも王都へ行ってほしいの」

「依頼、ですか?」


「そう、これは勇者からの依頼よ。

報酬とかは後で決めればいいけど、あとで依頼書を作っておくわね」

「依頼書にする理由は?」


「言い訳かな?」

「言い訳ですか?」

「恭也さん、孤児院をほっとくわけにはいかないでしょ?

この依頼はおそらく長期になる。そうなったら、子供たちが可哀そうでしょ」


俺は、子供たちの顔を思い出しながら困惑する。

「た、確かに…」

「だから、長期の依頼ってことにして迷宮都市へ行ってきなさい」


「ジェシカさん、いろいろ気を使ってもらってありがとうございます」

絵美さんが驚いたように

「恭也さん、孤児院とかしてたんですか?」


「ああ、前に王都に行ったときにね…っと、

ジェシカさん、王都に行くのは何でですか?」

「あ~、王都のある人の所にいる人物を

迷宮探査に連れていってもらおうかと思ってね…」


俺は困った顔をしながら、ジェシカさんに聞いてみた。

「その人物って、迷宮に連れていっても大丈夫なんですか?」

「本人はことあるごとに、迷宮に行ってみたいってうるさかったから…」


「ちょうどいいから、連れていってもらおうと?」

「実力は保証するわよ、迷宮でも恭也さんの足手まといにはならないと思うから。

ただ、立場があったから行けなかったのよね…」


「え? 立場??」

「まあ、訪ねてみればわかるからお願いね?」

「…断ることはできないんですね?」


「…お願いね?」

すっごくいい笑顔でジェシカさんが脅してくる。

今までジェシカさんにはお世話になってるし、これからもお世話になると思うし

…断れないな…


「わかりました、ジェシカさんのも依頼扱いでお願いします…」

「ありがとう、恭也さん」


絵美さんが可哀そうな目で俺を見ている…

「あの、絵美さん」

「は、はい」

「出発は明日の朝でいいですか?」


「はい、それでお願いします」

「じゃあ、今から依頼書を作るから少し待っててね」







ここまで読んでくれてありがとう。


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