第48話 ドラゴン襲来、テイム
「……緑のドラゴン?」
俺がそのドラゴンを確認した時、体を揺さぶられる。
偵察ゴーレムの映像を見るためにかぶっていた、魔道具を脱ぐと
シャルが何か言いたげな表情で、俺をゆすっていた。
「どうしたんだ、シャル」
「あの、外の様子はどうですか? 子供たちも私も不安で…」
シャルは俺の服を握ってうつむいてしまう。
俺はシャルの頭を優しく、ゆっくり撫でてやると
「シャル、リコのジュースがあっただろ? あれをみんなに配ってあげて」
「恭也様……」
「不安なのはみんな一緒だよ。でも今は落ち着かないとね」
シャルは少しだけ、しっかりした顔をして
「はい、みんなにジュースを配ってきますね」
シャルが離れたのを確認すると、俺は再び魔道具を装着し外の様子を見る。
孤児院の屋根の上に、クモ型の偵察ゴーレムがドラゴンがどうなるのか見ている。
その偵察ゴーレムを通じて、俺が見ていた。
拘束されている赤いドラゴンの周りに、白と青と緑のドラゴンがそろったな。
ドラゴンナイトたちが何か言い合いをしている。
音も拾えるようになんとかしておけばよかったな……
緑のドラゴンから、1人降りてきたな。
少女…いや、女性かな?
緑のドラゴンナイトはいるみたいだから、この女性は誰だろう?
緑のドラゴンも赤いドラゴンの拘束に加わったな。
3体のドラゴンで拘束されているのに、赤いドラゴンは抵抗をやめない。
あ、赤いドラゴンの尻尾が!
―――ズズゥゥゥン…
あぶな~、もう少しで女性が下敷きになるところだった…
緑のドラゴンが赤いドラゴンの尻尾を拘束したな。
尻尾をよけるために、倒れこんだ女性が再び立ち上がって赤いドラゴンに
手をかざして、何か唱えているな…
…詠唱が長いな。かなりの大呪文か?
ん? 赤いドラゴンの口の端から炎が上がっている。
ブレスか!
白いドラゴンが気付いた、尻尾で赤いドラゴンの横面を叩く!
―――ドオォォン…
大きな衝撃音とともに、赤いドラゴンの顔が地面に叩きつけられる。
それと同時に口から炎のブレスが町の壁へ!
……ああ、町の壁の一部が溶けた…
なんて火力だ、これが『炎竜』の実力か?
そうこうしているうちに、女性の詠唱が終わったようだ。
赤いドラゴンの拘束されている地面に魔法陣が浮かび、光の鎖のようなものが
赤いドラゴンに絡まっていく。
それと同時に、赤いドラゴンがますます暴れ出した。
しかし、白と青と緑のドラゴンたちは懸命に赤いドラゴンを押さえている。
…もしかして、これが『テイム』か?
どんどん赤いドラゴンに光の鎖が絡みついていく。
しかし、これはどう見ても『テイム』というより『隷属』…
赤いドラゴンが空に向かって咆哮する。
―――グオオオォォォォ……
魔法陣が一層光り、一瞬眩しさで何も見えなくなった。
光が収まると、赤いドラゴンはどこにもいなくなっていた。
白と青と緑のドラゴンは、ドラゴンナイトを背中に乗せてその場にいる。
赤いドラゴンはどこに…
お、女性がその場に崩れ落ちた。
白と緑のドラゴンナイトが、ドラゴンから飛び降りて女性の元へ駆け寄る。
2人のドラゴンナイトが支えて、女性が立ち上がる。
何か、めちゃくちゃ疲れているみたいだな…
女性は緑のドラゴンに乗せられると、ドラゴンナイトも乗り込み
3体のドラゴンは上空へ飛翔した。
赤いドラゴンがどこへ行ったのか分からなかったが、3体のドラゴンは
上空をぐるりと旋回すると、東へ飛んでいった…
ドラゴンたちが飛んで行った後の光景は、すごい物だった。
溶けた町の塀の一部。壊さている家に燃やされた家。
デコボコになっている畑に、クレーターができた畑。
これを治すのは、一苦労だな…
俺は偵察ゴーレムを屋根の上から、地下への入り口のある食堂へ移動させる。
魔道具を外し、みんなを見ると
リコのジュースが効いたのかみんな落ち着いていた。
「シャル、ちょっと来てくれ」
俺はシャルを呼ぶと、外の状況を説明。
すでにドラゴンは去り、外は安全になっているみたいだが確認のため
俺が外に出て、安全と分かったら外へみんなを出してくれとお願いをすると
シャルは俺の右腕を、ギュッと抱きしめて
「私もご一緒します!」
……シャルの胸が大きいのはわかった。
それに女の子が柔らかいことも、よくわかった…
「あ、あのなシャル。外の安全を、確認するだけだから。
危険なことなんて、ないから。大丈夫だから、な?」
シャルは、そんな俺の言葉にますます抱きしめてくる。
「だめです、恭也様を一人にはしておけません」
「……」
「……」
シャルの耳が真っ赤だな…
「わかったよ、なら一緒に行こう」
シャルは俺に笑顔で、頷いてくれた。
シャルと俺は、地下室を出て食堂へ上がると
そこは机やイスがごちゃごちゃになった光景が目に入った。
「これは、地響きや衝撃でこうなったんだろう」
俺は偵察ゴーレムを、アイテムボックスにしまうとシャルと一緒に廊下に出る。
廊下に出ると、すべての窓ガラスが割れているのが分かった。
この世界では『ガラス』は過去の『異世界人』のおかげで、
一般まで出回っているが、まだまだ金額が高くおいそれと使われていない。
この孤児院に使われている『ガラス』は、俺が材料を見つけて
『錬金魔法』で作り出したものだ。
そのため、この孤児院では普通に使われている。
「この窓は、全部治さないとな……」
俺が窓ガラスを気にしているのに対し、シャルは窓からの景色に驚いていた。
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