第45話 近況報告と危機襲来
「どうしたんです? 近隣諸国の情報が知りたいって」
ジェシカさんは、俺の行動に疑問を持っているようだ。
「それが、最近戦争のうわさを聞くようになりましてね。
この国の周りの状況次第では、孤児院が心配で心配で……」
ジェシカさんは俺の心配事を聞いて、納得してくれたようだ。
現在、国同士の戦争は噂の段階でしかない。
『フィルバニー聖王国』を併合した『レビュラント帝国』は、俺の町から
東側に位置している。
また『勇者』達や『異世界人』が向かった南側にある『べルスベン王国』
この王国は迷宮都市で持っている国で、すぐに戦争になることはない。
比較的安全な国だ。
「そうですね~、今危ないのは……西側に点在する小王国群が危ないですね」
「小王国群ですか?」
「ええ、さらに言えば『ゴッドロード』がある『バルーガ王国』は
いい噂を聞きませんね」
「『ゴッドロード』って何ですか?」
「恭也さん、よく晴れた日。雲一つない空の時、西に一本の線が見えませんか?
縦に伸びているやつです」
俺は考えて、秋口に良く見えるアレかなと
「秋になると、西の空に見えますね。白い縦線が。あれですか?」
「そうです。あれが『ゴッドロード』です。
国の中央都市にある天に届くとされる『塔』、迷宮都市と違って神聖視されて
挑戦者がいないそうですよ」
「…それって、塔から魔物があふれてくるんじゃないですか?」
「そこは、王国の騎士を使って間引きはしていると聞いてます」
「う~ん、北はどうなんですか?」
「王国の北側は、海なんですよ。
勿論警戒は怠ってはいませんよ、何せ海の先には8人の魔王がいる大陸ですからね」
「えっと、魔王って8人もいるんですか?」
ジェシカさんは少しだけ驚いた表情を浮かべて
「知りませんでしたか? 確か、恭也さんも創世のお話を聞きましたよね。
あのお話に魔王が5人いるって出ていたでしょ?」
「そう言えば…、でも何で3人増えているんですか?」
「あの創世のお話にある通り、
北の大陸には『邪の神』の封じている門があります。
魔王は、その門からあふれる『邪の神』の魔力によって選ばれるそうです。
最初は『邪の神』が自ら魔王を生み出したとされていますが、
今では門に封じられ身動きがとれないので、
魔族の中から選んで自分の加護を与えて魔王としているそうです」
「ジェシカさん、よくご存じですね…」
ジェシカさんは、ニコリと笑顔を見せると
「魔族の中には、こちらと友好関係にある人たちもいるんですよ。
で、その人曰く、お話に出てくる5人の魔王はすでに
『召喚された勇者』によって討伐済みで、新しく選出された魔王だそうです。
本来なら人を選ぶところ、戦力とかで拮抗し8人になったとか」
「……『勇者』が戦ったのはそのうちの1人の魔王ですよね?」
「ええ、こちらの大陸にちょっかいをかけている魔王だそうです」
魔王1人を勇者18人で勝てないって、どんだけ強いんだよ!
しかもそれが8人。これで貴族に文句言われたら、怒るわな。
自分達では何もしないくせに、人が失敗すると総攻撃。
魔王を討伐するより、貴族を討伐した方がこの世界のためになるんじゃないのか?
「…でも、これも問題なんですよね~」
ジェシカさんが1枚の紙を見てため息を漏らしている。
この世界には紙はありふれている。
なんでも召喚者たちが、そのあたりを作ったそうだ。
で、印刷技術も教えたから本なんかは比較的あふれている。
もっとも、それでも一般人が買うには結構高いが…
俺はジェシカンの持っている紙をのぞき込むと、
「何かあったんですか?」
「実は、帝国が私たちの国との国境付近に駐屯地を作ったんだけど
配備された兵士たちが、問題なのよ」
「…どんな兵士たちが来たんですか?」
「国境警備隊の30人と、『ドラゴンナイト』3体よ」
「『ドラゴンナイト』3体って、過剰戦力じゃないですか?」
「それが、森の奥にいると思われる野生の『ドラゴン』をテイムするのが
目的らしいわね。
昨日、国境警備の兵士が2人、注意喚起に訪れていたわ」
「確か、『フィルバニー』の件があって国境は砦化されたそうですよね」
「ええ、だからそう簡単に国境を越えてくることはないと思いたいけど
『ドラゴン』は飛べる種類もいるからね~」
う~ん、孤児院に『結界魔法』をかけておいた方がいいかな?
それとも、町全体に『結界魔法』が発動するような魔道具を作るべきか…
そんなことを考えていると、ギルド入り口から大慌てで人が入ってくる。
「た、大変だ!逸れドラゴンが1体、南の森からこっちに向かってるって
冒険者から知らせが来た!」
!!
ジェシカさんがその知らせてきた人に怒鳴る!
「ドラゴンの色は何ですか?!」
知らせに来た人は、その声に慌てて
「あ、赤だったと思う…」
ジェシカさんは、悔しそうな顔をして
「まずい!赤は『炎竜』一番気性の激し奴だ…」
その時、奥の扉が乱暴に開くと1人の女性が声を張り上げる。
「冒険者に緊急招集!町の人たちに避難命令!町長に連絡!
…何をしている!急げ!即行動!」
呆然としていたギルド内が、すぐに動き出す。
「恭也さん!恭也さんは、すぐに孤児院に戻って子供たちをお願いします」
「わ、わかりました」
俺は、ジェシカさんの声ですぐさま行動に移しギルドを走って後にした。
そして、騒がしい町中を孤児院に向かって走っていく。
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