第42話 難民問題
冒険者ギルドの中は、人でいっぱいだった。
朝から依頼を受ける人でごった返し、特に冒険者登録を済ませた新人が
掲示板にある新人用の依頼を受けて、ギルドから出て行く。
それが繰り返されてさっきの騒動らしい。
この町で依頼を受けて生活している冒険者から見れば、今回の難民たちは
自分たちの生活を脅かす人たちに思えたのだろう。
だが、仕事というものはなにも冒険者だけではない。
冒険者登録をして、依頼を受けていろんな仕事をしていくうちに
自分に合った仕事を見つけていく人たちもいるわけで、この混乱は今のうちだけだろう。
ギルド上層部や国の偉い人たちは、そう思っていた。
そんなことを受付の女性から説明されて、少し納得した俺たちは
昨日の盗賊の件の報酬の受け取りの報告と、今日村へ帰ることの報告を
していた。
「ジェシカさん、村の人たちとの待ち合わせ場所ってどこですか?」
「それなら、この冒険者ギルドの正面になっているわよ」
俺はジェシカさんから場所を聞いて、移動しておく。
「それなら、ギルド正面で待機しておきますね」
「わかったわ、ギルドで要件をすませたら私もすぐに向かうから」
俺はシャルたちを連れて、ギルド正面の出入り口の邪魔にならないところに
『ゴーレムバス』を取り出し、乗り込んで休んでおく。
「シャルたちも、乗っておいて。村の人たちが来たら荷物の積み込みを手伝ってくれ」
「わかりました」
シャルたちは素直に返事をして、バスに乗り込んで待っている。
1時間ぐらい待っていると、4人の村の人たちが大きな荷物を持って現れる。
「来たようだね、シャルたちも手伝ってね」
俺やシャルたちがバスから降りて、村人に挨拶をする。
「おはようございます」
「おはようございます。冒険者さん、この荷物はどこへ積みます?」
俺はゴーレムバスの後ろ正面に立ち、そこにある扉を開けて
「ここに荷物を載せられるので、ここにお願いします」
「へぇ~、こんなところが開くのか」
「そう言えばこの馬車の後ろ、座っているとき空いてたな」
「これは広い荷物置き場があるんだな~」
「あんた、いい馬車持ってるね~」
村人たちは感心している。もちろん、シャルたちも驚いていた。
「荷物を積み終わりましたら、中で座ってお待ちください」
荷物を載せ終えた人たちは、バスに乗り込み椅子に座って待つことにする。
さらに30分ぐらいして、残りの村人が大きな荷物を持って現れた。
「皆さん、おはようございます。荷物はこちらからお願いします」
「おはようございます、ここでいいんですか?」
「はい、ここに乗せ終わったら中に乗ってお待ちください」
村人たちは荷物を置いていく。
大きな買い物をした人もいたが、きちんと積むことができた。
「シャル、全員乗った?」
シャル以外はみんな乗り込み座って待っていた。
「はい、あとはギルドに行っているジェシカさんだけです」
「わかった、シャルも乗り込んで。ジェシカさんが来たら出発しよう」
「はい」
シャルが乗り込み、ジェシカさんを待っていると10分ほどでギルドから
2人の女性と一緒に出てきた。
「な、なんですかこれ…」
「ジェシカさん、これが噂の?」
何か2人の女性が、ゴーレムバスを見て驚いている。
新鮮な感じがする…
「ええ、これが噂の『ゴーレム馬車』よ」
「ジェシカさん、皆さんもうそろってますよ」
「私が、最後なのね。ほら、二人もこのゴーレム馬車に乗り込んで」
「「は~い」」
ジェシカさんと2人の女性が、ゴーレムバスに乗り込んで椅子に座る。
みんなが乗り込んだことを確認して、出入り口を閉めてバスに乗り込み出発する。
ゴーレムバスを動かし、町を出て街道を進んでいるときに
「それでジェシカさん、その2人も村へ送るんですか?」
「ええ、この2人は臨時で村のギルドに来てくれることになった職員よ」
長髪ストレートの金髪の女性があいさつをする。
「初めまして、ジェシカさんの後輩のエマって言います。
ギルド職員になってまだ5年ですけど、村のギルドで見かけたらよろしくね」
ピンク色の髪をポニーテールにした女性が次に挨拶をする。
「初めまして、私もジェシカさんの後輩のレムよ。
私は受付なしないけど、ギルドで見かけたら挨拶は受けるわよ。よろしくね」
「2人とも仕事はできる人だから、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
シャルたちや、村の人たちもエマさんやレムさんに挨拶していた。
いろいろ雑談をしながら、バスは村への街道をひた走る。
行きは盗賊が出たものの、帰りはそんなものは出なくて快適な通行だ。
道中、兵士たちがせわしなく働く砦跡や国境へ向かう騎士を見かけるものの
何のトラブルもなかった。
ただ、ジェシカさんからちょっとした情報を得た。
「恭也さん、ギルドで聞いたんですけど
『フィルバニー』の半分の領土が帝国の領土になったそうですよ」
「え、それって占領されたってことですか?」
「ん~、それが譲渡して戦争停止にしたってことらしいです」
それってかなりまずいところまで攻めこめれたってことか。
まずな……
「ジェシカさん、もしかしてもっと難民が増えるかもしれませんね…」
「国やギルド上層部も、そう考えて話し合いをしているそうですよ」
だとすると、かなり深刻に受け取っているようだな…
「あ、それ聞きましたよ先輩。確か、一部の貴族が騒ぎ始めているとか」
「ああ~、ボルシニー男爵家でしょ? あの貴族、いつも何か反対してるよね」
エマさんとレムさんの顔が苦虫を噛みしめたみたいになる
「その男爵家の後ろには、侯爵家があるから調子に乗っているのよ」
ジェシカさんも、嫌いな貴族のようだ。
それから嫌いな貴族や、気持ち悪い貴族などの話で盛り上がっていた。
でも、難民が増えるか……
読んでいただき、ありがとうございます。




