第39話 村人輸送依頼
次の日、俺たちはまず冒険者ギルドへ行きアミとクロエの登録を行う。
冒険者ギルドの入り口には、朝早いというのに人があふれていた。
「す、すごい人ですね」
「アミちゃん、私の手を離さなないでね」
「は、はい!」
アミとシャルが手を繋ぎ、それを見ていたエリーがクロエとユニと手を繋ぐ。
「クロエちゃん、ユニちゃん手を放しちゃだめだよ」
「お、お願いします」
「…わかった」
みんな仲がいいな~
俺の後に続いて、なんとかギルドに入るとすぐに開いている受付の方へ移動する。
この人だかりは、思った通り雑貨屋へ続いていた。
「ジェシカさん、おはようございます」
俺が手を上げて挨拶をすると、人ごみの中からシャルたちが出てきた。
「ぷはっ、やっと出られた…」
「すごい人でした…」
シャルとアミは、髪の毛がぐしゃぐしゃで俺の傍に来るとすぐに直し始める。
少し遅れて、エリーと手を繋いだクロエとユニが人込みから出てきた。
「人がすごいです…」
「…帰りはどうしよう」
クロエは言葉も出ないらしい。
「ジェシカさん、あれって雑貨屋は大丈夫ですか?」
ジェシカさんは俺に苦笑いを向けると、首を横に振る。
「あれ、昨日からよ。雑貨屋にはもう商品はあまり残ってないそうよ」
俺は雑貨屋の方向を見た後、
正面の掲示板を見て依頼が1つだけなのを確認する。
「あの貼ってある依頼って、町への買い物ですか?」
ジェシカさんは笑顔で俺に答えてくれた。
「惜しいわね、あれは町までの輸送依頼よ」
「輸送依頼ですか?」
「ええ、雑貨屋があの状態でしょ? 村長と話し合って町までの輸送を
引き受けてくれる人を探しているの」
俺は少し考えて、
「行商人は、まだ来る時期ではないですか?」
「そうなの、だからこっちから町まで買い物に行かないとね」
需要と供給のバランスが崩れているこの村を救うには、この村に店を用意するか
物がある場所へ行くしかないわけか。
う~ん、ついにあれを披露するときになったのかな…
こんなこともあろうかと『ゴーレム馬車』こと『ワゴン車』を作った俺が、
まさかの事態のための商品、『バス』を出す日が来るとは…
「その依頼、俺が受けますよ」
「ホントに? 10人ほどを町まで運んでほしいんだけど、大丈夫?」
ジェシカさんの心配そうな表情を見て、
「はい、お任せください。ではお昼頃、村の入り口でお願いします」
「わかったわ、みんなに伝えておくわね」
俺は会話の後、ジェシカさんにお願いしてアミとクロエの登録を終えると
ギルドの裏口から外に出させてもらった。
ギルドカードを手にしながら、うれしそうにする2人。
シャルはカードを眺めている2人に声をかける。
「アミちゃん、クロエちゃんギルドカードを持ったのがうれしいの?」
アミがシャルに答える。
「それもあるけど、一緒のパーティーに入っているのが一番うれしいかな」
「うん、私もそれがうれしいな」
クロエもアミの言葉に賛同する。
シャルたちはその言葉がうれしかったのか、アミとクロエと手を繋いで
俺が向かっている村の入り口へ走っていく。
「お~い、走ると転ぶぞ~」
俺の忠告は聞こえなかったのか、それともよほどうれしかったのか、
シャルとエリーとアミとクロエの4人は、手を繋いで走っていった。
「ユニは行かないのか?」
そばにいたユニに声をかけると、ユニは俺の手を握って
「…みんな一緒」
といって俺に笑顔を向けてくれる。
村の入り口につくと、先に来ていたシャルたちと合流ししばらく待つ。
すると、ジェシカさんと一緒に村人が10人ほど集まってきた。
「恭也さん、町までの輸送をよろしくね」
村人たちはともかくジェシカさんも、着替えていた。
「ジェシカさんも行くんですか?」
「ええ、この依頼の未届け人になっているからね」
なるほどと、納得して俺はアイテムボックスから『ゴーレムバス』を出す。
案の定、みんな驚いていた。
「え~と、恭也さん。これは何?」
俺は鼻高々に告げる。
「何かのために作ってみました『ゴーレムバス』です」
「ゴーレム、バス?」
「はい、大勢の人を乗せる目的で作った『ゴーレム馬車』の亜種ですね」
「そ、そうなの。で、これはどこから乗ればいいの?」
俺は、驚いている皆をほっといて車体の横の入り口を開ける。
「ここから中へどうぞ」
ジェシカさんは、未届け人の責任感から何とかみんなに中へ入るように誘導する。
「みなさーん、ここから中へ入ってくださーい」
何か村人からジェシカさんへ質問などがあったが、何とかみんな中へ入った。
シャルたちも、俺の作る物ならと中へ入っていった。
俺は、みんなが入ったのを確認して入り口を閉めてから運転席へ座る。
「では、出発しますね~」
俺がスイッチを入れて、『ゴーレムバス』を起動させて後ろを見ると
なぜか全員立っていた。
「あの、皆さん? そこの椅子に座ってくださいな」
「あ、座っていいのね…」
ジェシカさんが座ると、みんな一斉に近くの椅子に座る。
何か奇妙な現象だなと、思いながらも『ゴーレムバス』を走らせる。
村の入り口から街道へ、街道から『ナルキド』の町へバスは走る予定だ。
「ジェシカさん、大きな馬車が『ゴーレム馬車』になったのと同じですよ?」
「そうなのよね、そうなんだけどね…」
ジェシカさんは不安な表情を浮かべているし、村人も同じようだ。
シャルたちは、俺の運転席の後ろの席に座っている。
平気な様子だが、少し緊張しているみたいだな…
……慣れるまではしょうがないかな。
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