第4話 魔術師ギルド
『ナルバ村』へ向かう道中。
村までかなりの距離があるらしく、王都を出発して2日が経過していたがまだ着かない。
こんな時は車で走ればと思ってしまう。免許持っているし…
そうだな、道中は暇なんで俺たちを乗せてくれている乗合馬車の説明でもしておこう。
この王都から出ている乗合馬車は、どんな辺境の村へも出ている。
王都を出るときは、終点までの間にいくつもの村や町を通るので馬車の数は多い。
そして護衛の冒険者の数も馬車の数に比例して多くなる。
俺が乗っている『王都発ナルバ村行き』は馬車15台で動いている。
しかし、この数は途中の村や町によっていくとその都度減っていくのだ。
勿論、護衛の冒険者の数も減るわけだ。
乗合馬車の御者の人に聞いたところ、『ナルバ村』に着くころには
馬車が1台になっているらしい。辺鄙なところに行くことになったな~
さらに3日が経過した。
馬車に揺られながら、俺は魔法の勉強を欠かさずやっている。
本を読み、魔力操作をし、いろんな魔法を試している。
道中の村や町は、時間があると見て回っているが買い足すものは食料ぐらい。
そうそう、『ナルバ村』の一つ前の町『ナルキド』に今日ようやく着いた。
明日には、ようやく『ナルバ村』だ。
その前に俺は、この町の『魔術師ギルド』で『中級魔導書』を手に入れるつもりだ。
乗合馬車が、『ナルキド』にある中央広場に停車して御者の人が声をかける。
「明日、9つの時を知らせる鐘が鳴ったら出発します!次は終点『ナルバ村』!」
馬車を下りると、前の馬車に乗っていた勝君たちが下りてきて俺に挨拶してきた。
「それじゃ、おじさん。元気でね!」
「おじさん、またね~」
「おじさん、頑張ってね!」
「ばいば~い、おじさん」
「みんなも気を付けて冒険者をやるんだぞ~」
俺は、勝君たちに別れを告げてまずは宿屋を探して町をうろつくことにしよう。
中央広場を北に行くと、領主の館と貴族が住んでいるため塀と門で隔離されている。
門兵が人の行き来を管理しているので、俺は入ることができない。
なので、北に行くのは断念する。
中央広場から西に行くと、入ってきた門と住民たちの住む住宅街だ。
勿論、俺には用がないので却下。
中央広場から南は市場や店、職人が住む職人街だ。
ここも今のところ用はないので俺は東へ向かうことにした。
中央広場から東は、宿屋が多くさらにギルドも多い。
『冒険者ギルド』をはじめ、俺の目指す『魔術師ギルド』もこっちにある。
俺は『魔術師ギルド』の近くにある宿や『森のしずく亭』に入った。
「すみません、1泊お願いします」
「は~い、いらっしゃいませ。お泊りなら1泊銀貨5枚ですよ」
銀貨5枚ということは、安い方なのかな?
前、町で泊まった時は銀貨10枚だったから安い方か。
「1人なんで、それでお願いします」
「はい、では1人部屋ですね。2階の203へどうぞ」
俺はおかみさんから鍵を受け取ると、銀貨5枚を払って2階へ上がった。
「え~と、203……203……ここか」
鍵を開けて、部屋の中に入るとベッドが1つと小さな机と椅子が1つあるだけの部屋だ。
トイレは廊下にあったあそこが、共同で使うのだろう。
部屋は6畳ほど。しかし、ベッドシーツに染みがあるな…
掃除は一応しているんだけど、従業員が足りずに手が回っていない感じだ。
安さの理由はここか…
そうだ、あの魔法が使えるな。道中に覚えた生活魔法。
「え~と、部屋全体を見渡して【クリーン】」
唱えた瞬間、部屋全体が光るとそこには清潔な部屋が現れた。
「す、すごい。ベッドの染みは消えたし床も壁もきれいになった」
魔法はすごいな!現代日本にこの魔法があれば、俺の住んでいた部屋も…
いや、機械類にどう働くかわからんから使えないか…
とにかく宿も確保したし、『魔術師ギルド』へ行ってみるか。
俺はさっそく宿の1階に行き、出かけることを伝えると
203と書かれた木の板を渡された。俺が困惑していると、
「宿に帰ってきたときに、私が受付をしているとは限らないんで
この部屋番号の書かれた板を渡してください。そうすれば鍵を渡しますので」
「なるほど、ならこれはなくせないな」
「なくさないでくださいよ、お客さん」
「ああ、わかった。では行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
俺は宿を出ると、そのままギルドへ向かった。
ギルドに近い宿を確保して助かった。すぐについたな。
『魔術師ギルド』は隣の『冒険者ギルド』と大して変わらない大きさだ。
さらに『冒険者ギルド』の隣には『商人ギルド』が並んであった。
おそらく、ギルドで買い取った素材とかが隣の『商人ギルド』へ流れているのだろう。
よくできているな。と感心しつつ『魔術師ギルド』へ入っていく。
『魔術師ギルド』には受付カウンターがあり、ここで依頼などを受けるのだろう。
右手には、いろんなものが売っている売店。その隣に2階へ上がる階段がある。
2階には図書館があるようだ。
まあ今回の俺は受付カウンターで、魔術書の購入だ。
「いらっしゃいませ、どのような御用ですか?」
俺がカウンターに近づくと受付嬢の1人があいさつしてくれる。
「あの、『中級魔術書』を売ってほしいんですが」
「え~と、ギルドカードを見せてもらってもいいですか?」
俺はアイテムボックスからカードを取り出し、受付に提示する。
「これでいいですか?」
受付嬢は、カードを受け取りカウンターの水晶にカードを差し込んでのぞき込む。
「え~と、はい問題ないですね。では『中級魔術書』1つ金貨1枚です」
俺は金貨1枚をアイテムボックスから取り出し、
カウンターに置くと少し疑問に思ったので聞いてみた。
「あの、なぜ水晶を見て判断したんですか?」
「ああ、ギルドカードには持ち主がどこまで魔術を覚えているかが
載っているんです。ですから初級魔術を卒業しているかがわかるんですよ」
「へえ~、ギルドカードにそんなことが…」
受付嬢の後ろから、ギルド職員の人が本を受付嬢に渡し俺に出してきた。
「では、こちらが『中級魔術書』です。しっかり勉強してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
俺はその場で本をめくり確認すると、アイテムボックスに入れてギルドを後にした。
早く宿に帰って、読みたかったからな~
明日には村に着くし、忙しくなりそうだ…
読んでくれてありがとうございます。