第37話 2人の同居人
冒険者ギルドでジェシカさんと話をしていると、ギルド職員の人が入ってきた。
「ジェシカさん、入村する人たちが中央広場に来ました」
その声は、ギルドにいた人たち全員が聞こえたほど大きな声だった。
「みんなで、迎えに行こうか」
「はい」
シャルの返事にエリーとユニは、頷いて答えた。
村の中央広場には、たくさんの人たちがいた。
この村に住んでいる人たちや、冒険者。
そしてこれからこの村に住むことになる人たちや、親の傍を離れない子供たち。
その人たちから少し離れたところに、俺たちが迎える2人の女の子がいる。
アミちゃんは、杖をついて立っていた。
髪は肩まで伸びていたがボロボロで、服も所々破れていた。
よく見るとかわいらしい顔なのだが、すす汚れていた。
クロエちゃんの両手は手首からなかった。
そのため、アミちゃん同様に肩まで伸ばしているというより手入れができていない。
服もずっと着たままなのか、泥だらけでボロボロだ。
時々、隣にいるアミちゃんがクロエちゃんの世話をしているようだ。
肘から手にかけて包帯がまかれているのが痛々しい。
そんな風に考えて2人を見ていると、村長の話も終わり
これからこの村に住む人たちを連れて広場から移動している。
俺たちは、アミちゃんとクロエちゃんに近づいていく。
「こんにちは、アミちゃんとクロエちゃんかな?」
2人は俺たちを見て、体が強張らせている。
「は、はい。私がアミです……」
「ク、クロエです…」
シャルが前に出て、2人の傍でしゃがんで目線を同じにすると
「初めまして、今日から一緒に暮らすシャルといいます。よろしくね」
ニコッと笑うシャルは、2人に少しだけ安心を与えたようだ。
「私は、エリーです。よろしく」
エリーもいい笑顔で2人に話しかける。
「…ユニ、よろしく」
あ~、ユニは言葉数少ないけど、歳は近いしこんなものかな。
「最後に、俺は恭也です。
それじゃあ、君たちの住む家に案内しようか。ついて来てくれ」
2人はやはり緊張しながら、ついてくる。
「よ、よろしくお願いします…」
「お願いします…」
2人の歩くスピードに合わせて、我が家に向かっている。
シャルたちが2人の世話を焼いていてくれるので、助かっているが
俺は2人を見ていて、目が死んでいるとか
悲観しているとかそんな感じには見えなかった。
たぶんどこかで折り合いをつけているのかなと、予想してしまうが
1年は様子を見た方がいいかなと、思案してしまう。
心の傷は、そう簡単に治るものではないからな…
少しだけ時間はかかったが、我が家につくと俺はさっそく2人を
リビングに連れていき治療を始める。
「さて、これから君たちの治療を始めるから覚悟しておいてね」
「あ、あの…」
アミちゃんは申し訳なさそうにしているし、クロエちゃんは俯いてしまった。
「あの恭也様、アミちゃんとクロエちゃんは治るんですか?」
シャルが聞いてくるが、エリーとユニも興味があるみたいだ。
「ああ、治るよ。2人の症状を見て確信したからね」
俺はまず、2つの中くらいの樽を用意してその中へある液体を入れた。
「先生、この液体は何ですか?」
「これは魔素を濃縮した液体だよ。魔法の元、魔法の原料とでもいうのかな。
それを3倍に濃縮して、薬草などのポーションの液体に溶かしたものだよ」
「…これで何を?」
「シャル、クロエちゃんの包帯を取って両手をこの液体に付けて。
ユニ、この液体に両手をつけて治癒魔法を使うと再生するんだよ」
「…え?」
シャルは疑問に思いながらも、恭也様のやることだからと
クロエちゃんの両手の包帯を取り、痛々しい傷をした両手を樽の液体につけた。
付けた瞬間、ジュッとした音に顔を歪めたがすぐに感覚がなくなったのか
そのままつけている。
「シャルと、エリーはクロエちゃんを支えてあげてね」
そう言うと、エリーとシャルはクロエの両側に立ち体を掴んで支える。
「いいかいクロエちゃん、腕がかゆくなるけど我慢してそのままつけておいてね。
……いくよ、【ハイヒール】」
俺が治癒魔法を唱えると、樽の液体が淡く光り
液体の中から泡がいくつもわいてきた。
ごぼごぼという音とともに、クロエがうずうずしだすとシャルとエリーが
それを支えて、液体から手を出さないように見守る。
そして30秒ほどたつと、泡が出なくなり淡い光が消える。
「…もういいよ、手をそっと液体から上げてみて」
クロエは、恐る恐る手を液体の入った樽から上げると
そこにはなくなっていた両手が再生していた。
ゆっくりと握ってみるクロエ。握れることができた瞬間、クロエは座り込んだ。
「う、うぐ、うう、うわああああああああ……」
クロエは泣いた。今まで我慢していたすべてを吐き出すように泣き出した。
「…クロエちゃん……」
クロエに寄り添いアミも泣いていた。
周りを見てみれば、シャルやエリーもユニでさえ泣いている。
俺は彼女たちの涙を見て、再生学の本を日本で読んでいてよかったと安堵していた。
俺は、興味を持ったものの本を必ず読んでいた過去の俺に感謝した。
クロエは、泣きながらシャルの腕につかまり
「わ、私……もう、もう…生きるの…諦めてた……
お母さん……お父さん……私…い、言われた通り……生きて、行くよ……」
その言葉を聞いて、アミがクロエを抱きしめた。
「クロエちゃん、私も、私も同じだよ……
これから、頑張って、行こう? ね?」
アミに抱き着かれたまま、クロエは何度も頷いていた。
「次は、アミちゃんの番だよ」
俺はそう言ってアミに近づいて目の前にしゃがむと、アミの足に触れて
治癒魔法を唱える。
戸惑うアミだったが、治癒魔法の淡い光が消えると傷ひとつない足が見えた。
恐る恐る動かすアミ、杖をエリーが預かると1人で歩く。
ゆっくりゆっくりと歩いて、泣き出した。
「うう、うぐ、うう、ううう……」
シャルはアミの頭を優しく、優しく撫でて
「よかったね、アミちゃん……」
泣きながら頷くアミを、エリーやユニやクロエは喜んでいるようだった。
みんなでいっぱい泣き終わると、
シャルたちはアミとクロエをお風呂へ連れていった。
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