第34話 急展開
いきなりの戦争終結で、どうすればいいのか分からなかったので
俺たちは取りあえず冒険者ギルドへ来てみた。
ギルドの職員たちの大半は、外で仕事をしているためギルド内には
ほとんど人がいなかったが、ジェシカさんは受付で仕事をしていた。
「シャルたちは、ジェシカさんと話をしていてくれ」
「わかりました、戦争の状況とか聞いておきます」
「俺は掲示板を見てから、雑貨屋へ行くから」
「では後で迎えに行きますね」
「ああ、頼むよ」
シャルたちと別れ、入り口正面の掲示板を見に行くと
おかしな張り紙があった。
『異世界人は絶対に読むように!』
「……これ日本語だな」
え~と、
―――私たち『勇者』は全員この王国を離れることにした。
―――私たちは魔王討伐に失敗した。残念だが未熟だったとしか言えない。
―――だが王様たちは、私たちに再び立ち上がるまでの時間をくれたのだが
―――この国の貴族たちが私たちを処刑して、新たな『勇者』を召喚せよと
―――王様に迫ったのだ。
―――このままでは、私たちは処刑されるかもしれない。
―――何より、この国の貴族どものために戦いたくない!
―――そこで私たちは王様にだけ話、許可をもらってこの国を出ることにした。
―――私たちと同じ時に召喚された人たちよ、ともにこの国を出ないか?
―――この国からさらに南にある『べルスベン王国』にある
―――迷宮都市『ガルチャ』に集まってくれ。今後のことなどを話し合いたい。
―――勇者一同。
……マジか? 魔王討伐失敗?? ってことは元の世界に帰れない???
ダメだ、いろいろ急すぎて訳が分からん。
しかし、この張り紙がいつこの掲示板に貼られたのか教えてもらうか。
俺はこの『異世界人は絶対に読むように!』の張り紙をはがして
ジェシカさんの所へ持って行って聞いてみた。
「すいませんジェシカさん、この張り紙いつ頃掲示板へ?」
「あ、恭也様」
「恭也さんの持っている張り紙?」
ジェシカさんは、俺が持ってきた張り紙を見て
「この張り紙は、王都の冒険者ギルドからこのまま張り出すように通達があったの」
「いつ頃かわかります?」
「確か、さっき持ってこられたわね。
戦争の影響でこのギルドに届くのが遅くなっていたのよ」
俺は少し考える。
「……王都はいつ頃張り出されたか分かりますか?」
「え~と、確か戦争前だったはずよ」
俺はさらに考え込むと、
シャルたちが心配してくる。
「恭也様、どうかされたのですか?」
「先生…」
「ん?ちょっとこの張り紙の中身がな……」
ユニが俺の袖をつかんで
「…教えて」
俺は周りを見渡し、俺たち以外の人がいないことを確認してから話した。
「ジェシカさんはこの張り紙読めますか?」
「ごめんなさい、残念ながら読めないわ」
「シャルたちはどうだ?」
「…私たちも読めないと思います」
エリーもユニも、頷いている。
「実は、この張り紙は『勇者』達からのメッセージなんです」
そう言って、張り紙の中身を読んで聞かせる。
ジェシカさんたちは、驚いて困惑している。
シャルたち3人は、俺の服をそれぞれ掴んできた。
「…行くなら一緒にお願いします」
「私もです、先生」
「…ついて行く」
俺は3人の頭をやさしく撫でていき
「俺はここに残るから大丈夫。どこにも行かないよ」
「いいんですか?恭也さん。
『異世界人』の皆さんは行かれる方がほとんどだと思いますけど」
「ええ、俺はこの村が好きですし」
「……それなら、戦争は終わりました。
これからもこの村で、このギルドでよろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
「私たちもよろしくお願いします」
エリーとユニも頷く。
「ああ、よろしくな」
ジェシカさんは、俺たちを笑顔をで見つめてくれる。
「では、戦争がどうなったかお話ししましょうか?」
「ぜひ、お願いします」
「『フィルバニー』がなぜ急に撤退したのかですが、原因は帝国の侵攻です」
「帝国って確か、『フィルバニー』の東にある『レビュラント』ですか?」
「はい、その帝国が侵攻を開始しました。
どうも私たちの王国に攻めてくる計画を知って帝国は動いたようですね」
「でもそれで急な撤退とはならないのでは?」
「いえ、帝国には強力な部隊が存在します。今回はその部隊を動員したようです」
「帝国の強力な部隊ですか?」
エリーが分からないと、首を傾げて聞く。
「竜騎兵、通称『ドラゴンナイト』です」
すごいぞ、帝国! 絶対見に行きたくなってしまった……
「…見てみたい」
ユニも興奮しているみたいだ。
「その『ドラゴンナイト』が出てきたために、急な撤退になったと?」
「そうです。今、国境付近に『フィルバニー』からの難民がいるのですが
彼らが言うには、町や村が『ドラゴン』に乗った騎士に襲われたと」
「それで、今『フィルバニー』はどうなったんですか?」
「そこまではまだ。でもいずれ情報が入ってきますからその時に教えますね」
「…気になる」
シャルたちも気になっているようだが、俺は別のことが気になっていた。
「それと、難民は受け入れるんですか?」
「う~ん、それは決めかねているようです。
この村の村長は、ある程度の人数なら受け入れてもいいと言っているんですが…」
俺たち4人と受付嬢は、難しい顔で考え込む。
「難問だらけだな……」
ここまで読んでくれてありがとうございます。




