第19話 王都のギルド
王都に到着した俺を待っていた最初の困難は、王都に入るための列だった。
長い、めちゃくちゃ長い…
城門の所で、兵士が6人がかりで手続きをしているが時間がかかっている。
俺は、しょうがないと諦めて待つことにした。
グゥ~
俺はお腹が空いたので、アイテムボックスから『ハンバーガー』を取り出す。
このハンバーガーは、まとめて作って持ってきたものだ。
さらにドリンクを取り出す。
このドリンクは水筒に入っているのだが、この『水筒』も俺が作ったものだ。
アイテムボックス内は時間が止まっているので、温度も作った時のまま。
ムフ、コーヒーの豆を市場で見たときは、うれしくて即買いしてしまった。
うちで焙煎して飲んでみたら、コーヒーそのもの。
俺は列に並んだまま、ハンバーガーにかぶりつく。
やわらかいパンに、肉汁たっぷりのハンバーバーグ。さらにシャキシャキのレタス。
マヨネーズソースも、ピリうまだ。
水筒のコーヒーも、いい匂いをさせている。
列に並んでいる俺の前後の人たちが、羨ましそうに見つめている。
また、親に手を繋がれている子供がこっちをじっと見つめていた。
……俺はその見つめる子供に勝てなかった。
子供に手招きをすると、親の手を放して近寄ってきた。
俺は食べていたハンバーガーを指さして
「食べたいのか?」
子供は勢い良く何度も頷く。
そんなに食べたいならと、アイテムボックスに水筒を持った手を入れて
紙で包んだハンバーガーを取り出し、子供に差し出す。
「食べてみろ、おいしいぞ」
パッと笑顔になると、子供は包みを受け取りさっそくはがして中のものにかぶりつく。
そしてもぐもぐと咀嚼して、のみこむと
「おいしー!こんなの初めて食べた!」
「そうか、列に戻った方がいいぞ」
「うん、ありがとうおじさん!」
子供はハンバーガーを食べながら、親の元に戻っていった。
俺の前後に並んでいた人も、我慢できなくなったのか
「なあ、俺にももらえないか?」
「わ、私もお願い。おいしそうで…」
俺は2人に1個ずつ取り出し、「どうぞ」と渡してあげる。
「う、美味い!」
「なにこのパン、やわらかい!」
2人は、子供と同じように食べるのに夢中だ。
そんな風に時間を過ごしていると、ようやく王都内に入ることができた。
食事から2時間ぐらいして、ようやくだ。
王都内に入った俺は、すぐに宿を探す。
オークションまであと3日。王都内の宿はどこも満室。
1時間ほど探し回って、ようやく見つけた。
『村の癒し亭』という宿屋に10日滞在することにした。
まずは宿でゆっくりする。王都探索は明日からにしよう。
次の日、俺はまずオークション会場へ足を運んだ。
まずは会場がどんなところなのか、知っておかないとな。
宿の主人に会場の場所を聞いて、向かうと10分ほどで到着する。
その会場は大きかった。建物の中の人に聞いたところオークション専用のものだそうだ。
オークション専用とは、もったいないと思うのは日本人ぐらいかな…
とりあえず、オークション参加者用の入り口と出品者用の入り口を聞いて
その建物を後にした。
次は、冒険者ギルドへ足を運ぶ。
王都のギルドはどんな依頼があるのか、興味を持ったからだ。
露店での買い物のついでに、冒険者ギルドの場所を聞くと
王都にはギルドが2種類あることが分かった。貴族用と庶民用だ。
……これはトラブル防止だなと、真っ先に思ったのは俺だけではないはずだ。
勿論、俺は庶民用に行く。自分からトラブルに首は突っ込まない。
王都の庶民用冒険者ギルドは、『ナルキド』の町のギルドと変わらない大きさだった。
これならと、気にせず中へ入る。
掲示板は正面にあり、お昼過ぎという時間でも冒険者は多かった。
入って右手に2階への階段と、買取のための受付。
左手は全面受付カウンターだ。受付嬢が6人いて、何かしらの仕事をしていた。
掲示板の依頼書を眺めていると、後ろから肩を叩かれて声をかけられた。
「君、魔法使いか?」
俺が戸惑っていると
「違うのか?違うならそんな恰好はしない方がいいぞ」
そう言って、離れていった。
せっかちな奴だな……
俺は、冒険者ギルドを出て行くと次は魔術師ギルドへ足を運ぶ。
再び、露店で買い物をして魔術師ギルドの場所を聞く。
魔術師ギルドは、貴族用と庶民用には分かれていなかった。
ギルド内に入り、辺りを見渡すと造りは冒険者ギルドと同じだった。
俺はカウンターの受付嬢に話しかける。
「すみません、『上級魔術書』を購入したいんですが…」
「それでは、ギルドカードを提示してください」
俺はアイテムボックスからギルドカードを出すと、受付嬢に提示する。
「…はい、中級はマスターしていますので『上級魔術書』の購入資格はありますね」
受付嬢は、カードを返却してくれると
「では『上級魔術書』は、金貨3枚になります」
俺は金貨3枚を、受付嬢に渡すと
「では、少しお待ちください」
と言って、席を離れていった。俺はギルド内を眺めると、掲示板を睨んでいる人がいた。
「お待たせしました、こちらが『上級魔術書』です」
俺は、受付嬢から本を受け取るとすぐにアイテムボックスにしまった。
そして、軽く挨拶をして魔術師ギルドを出て行った。
ギルドを出るとき、掲示板を睨んでいる人が見ていた依頼書は
『治癒魔法の使える魔法使いの募集』
王都の有名パーティーが募集していたようだ。
俺には関係ないな~と思いながら、ギルドを後にした。
今回も読んでくれてありがとうございます。