第18話 王都到着
『ナルキド』の町から『ナルバ村』の自宅に帰ってきてから20日。
オークションに出すゴーレム馬車を3台作ってからは、
ずっと籠って、ゴーレムバイク開発していましたが
今日、ようやく完成しました!
見よ!このゴーレムバイクを……って、分からないか。
見た目は地球で見かけるバイクと同じ。燃料をガソリンから魔力に変えたものだ。
でもこれは電気で走るスクーターって感じかな。
最初は大型のバイクを、レースに出るようなやつをって考えていたけど
そんなものどうするのか!という話になる。
ここは異世界だ、大きすぎても速すぎても意味はない。
必要なのは、安全性。事故を起こしたら救急車は来ないし、保険もない。
すべて自己責任だ。
こんな異世界で、街道移動以外何に使うのかを考えれば
自ずとスクーター型になった。
それに、ゴーレム馬車という自動車もあるのだ。
1人~2人乗りのバイクに何の意味があるのかと考えれば、
今まで開発してこなかった『異世界人』たちは、分かっていたのだろう。
異世界にバイクは、いらないと……
次の日、俺は街道を王都へ向けてゴーレムバイクで走っている。
ゆったりと座り、適度な速度で走り、疲れたら街道から少し外れて休憩。
天気はいいし、飯はうまいし、盗賊は出てこないし。
何か、今が一番この世界に来て充実している気がする。
2日かけて王都から5番目の村に到着。ここは『ロジス村』。
『ナルバ村』の2倍ほどの大きさで、ギルドと雑貨屋は別になっていた。
今日は、この村にある宿屋で1泊する。
村の入り口まで、ゴーレムバイクで乗り付けた俺は
バイクをアイテムボックスに入れて村に入る。
門兵さんに少し職質されたが、ゴーレムバイクが珍しかっただけみたいだ。
村に入り宿屋へ。
宿は1部屋だけ空いていたが、宿の主人の話ではほとんどの客が
王都へ行くそうだ。
俺は、夕食後すぐに部屋に戻り眠ってしまった。
どうも疲れがたまっていたようだ。
次の日、乗合馬車や商会の馬車が村を出るころ
俺も村の外に出て、アイテムボックスからゴーレムバイクを取り出し出発。
馬車に乗っている人たちが、少し騒がしかったが
気にせずに王都に向かって旅立った。
しばらくのんびりと街道を進んでいると、どこかの馬車が立ち往生していた。
俺は馬車の横を通り、御者の所で止まると何があったか聞いてみた。
「すみません、何かありましたか?」
御者は少し驚いたが、丁寧に答えてくれた。
「いえね、この先で盗賊が出たんですよ」
「盗賊が?それでここで止まっているのですか?」
「それが、護衛の人が見てきたそうなんです。2台の馬車を襲う盗賊を」
「え、今も襲われているんですか?」
「ええ、だから我々はここで立ち往生しているんですよ」
俺は少し考えて、出発した。
「ああ、まだ危ないですよ!」
「あ、お構いなく。俺、魔法使いですから~」
そう言って御者に手を振って、街道を進んでいく。
俺はあそこで止まっていた馬車の人たちを、薄情ものと責めることはしない。
勝てない相手に挑むのは、この世界では無謀なのだ。
何せ勝てない相手に挑むことは、よほどのことがない限り死ぬことと同義だ。
だから、盗賊が出たら勝つ自信がないなら逆らわない。
もしくは諦めるか、逃げる。
街道を5分くらい進むと、騒がしい一団に出くわす。
盗賊20人ぐらいと、立派な馬車に兵士らしき人が5人。
倒れている人が3人ほど。
俺はその一団にゴーレムバイクで近づき、
「手を貸しましょうか?」
「おう、俺たちに手を貸してくれるのか!」
俺は盗賊からの声を無視して、魔法を唱える。
「お前らじゃ、ねぇよ!【ガイアチェーン】」
「なに!?」
盗賊全員に、土の鎖が絡みついていく。
すぐに盗賊全員が地面に、縛り付けられた。
「くそっ!動けねぇ…」
俺は、もう盗賊はいないかと探査魔法を使うと反応はなかった。
そんなことをしていると、兵士の1人が近づいてきた。
「手を貸していただき感謝する。ところで其方は、治癒魔法は使えるかな?」
「ええ、使えますよ」
「なら、すまんがお願いしていいか?」
俺は、ゴーレムバイクを下りてけが人のもとへ行き治療を開始。
他の兵士たちは、土の鎖で動けない盗賊を一か所に集めていた。
兵士の治療を終えた俺は、俺に話しかけてきた兵士に
その盗賊はどうするのかと聞くと、近くの町から兵士が来て連れて行ってくれるそうだ。
そして、アジトを吐かせて襲撃。残りの盗賊をとらえるらしい。
俺は、ゴーレムバイクにまたがると兵士の人のあいさつをしてその場を去った。
……そういえば、馬車に乗っている人は降りてこなかったな。
3人ほど乗っていたようだけど…
ゴーレムバイクで、街道をひた走る。
町や村を何か所か通り過ぎ、いよいよ王都の城壁が見えてきた。
ここまでくると、街道にもたくさんの人が通っているのがわかる。
歩いている人、集団でいる人、馬車に乗っている人、大きな荷物を背負う人。
いろんな人が通っている街道を進み、行列に出くわす。
行列の先にあるのは、王都の門。
ということは、この行列は王都に入るための行列か…
俺は辟易しながら、列に並ぶのだった。
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