第15話 異世界人の作るもの
あれから3か月が過ぎた。
俺も、村の生活にようやく慣れて冒険者としても成長できただろう。
生活スタイルも、朝起きて、朝食を食べて、畑仕事、冒険者依頼の有無の確認
森での狩り、家に帰り鍛冶仕事、夕食を食べて、寝る。
そんな感じで過ごしていました。
事件らしい事件もないので専ら馬車の魔改造をしたら、今朝遂に完成。
家の庭に作った車庫にそれは鎮座していた。
ゴーレム馬車、というよりこれは自動車。
6人乗りの自動車を完成させてしまいました。動力は魔石です。
でも、このゴーレム馬車をジェシカさんに見せに行くと既に存在するとのこと。
なんでも『召喚された異世界人』は、必ずと言っていいほどこれを作るそうだ。
そのため、どこかの国では馬車ではなくゴーレム馬車が主流なのだとか。
少しがっかり感はあるものの、村から町へ、町から村への移動は便利であるので
使っていくことにした。
それに、すでにあるなら隠すことなく乗り回せるということだしね。
今日も俺は、ゴーレム馬車に乗り村と町を行き来している。
村と町の行き来は、乗合馬車が片道3時間、歩きなら片道4時間
でも、ゴーレム馬車ならば片道1時間。
そのため、ギルドで運搬の依頼があった場合のみ請け負っている。
ただで、運搬の仕事をするとそれを専門にしている人に怒られるのだ。
ジェシカさんに、そのあたりのルールというものをしっかりと教えてもらった。
さらにそれから1か月がたち、季節も暑い季節から涼しい季節へ変わったころ
冒険者ギルドの掲示板に、おかしな依頼書が張り出された。
『銀色の猫人族を探してほしい』
銀色の猫人族?
俺、人族以外見たことないんだけど…
受付にジェシカさんがいたので、この依頼書のことを聞いてみることにした。
「ああ、あの依頼書は隣国の冒険者ギルドから回ってきたのよ。
なんでも王城の宝物庫から宝物を盗み出したのが、銀色の猫人族だったとか」
「でも俺王都からこっちに来るまで、人族以外見たことがないんですが…」
ジェシカさんは笑顔で、優しく答えてくれる。
「恭也さん、この村にも人族以外の人種はいるのよ?」
「え、そうなんですか!?」
初耳だ、村の人にはこの3か月で全員にあったと思っていたけど
まだ会っていない人がいるなんて…
「その人、今は王都に出張中だから会えないけど
冬になる前には帰ってくるから、その時に挨拶をすればいいわよ」
「ええ、そうします。でもどんな人なんですか?」
「その人はね、エルフで王都にある学園の先生をしているの。
魔法関連は、この国で右に出るものなしの実力者よ。あと私の旦那でもあるの」
!!!
「ジェ、ジェシカさんって結婚されていたんですね……」
「あのね恭也さん、私の歳で結婚してない女性は訳ありしかいないわよ?」
「すみません、ついでにお歳を聞いても?」
ジェシカさんは苦笑いを浮かべながら
「本当は失礼な行為だけど、いいわよ。31歳になるわね」
「はぁ~、ジェシカさんって若く見られるんですね…」
「コホン。それで、今日は依頼を受けますか?」
「いえ、今日はやめておきます。
なんだか胸がいっぱいで、受けられそうにないです」
「そうですか。ではまたよろしくお願いしますね」
俺は早々に、ギルドを後にした。
ジェシカさんが既婚者だったとは……少しショックを受けた俺は家に帰って
畑仕事に精を出すのだった…
次の日、俺は一晩寝てショックから立ち直ると
ゴーレム馬車で『ナルキド』の町へ向かっていた。
「ゴーレム馬車を作っていて不思議に思ったけど、ゴーレムバイクって見ないな…」
ゴーレム馬車の四輪車ではなく、二輪車もしくは三輪車は作れないかなと
俺は思案している。二輪車はバイク、三輪車はトライクかオート三輪。
悪路専用に、キャタピラで作るのもありか?
そんなことを考えていると、前方の街道の傍で女の子が両手を振っている。
あれは、止まってくれの合図かな…
何かあったのだろうと、その女の子の傍に止めると
「た、助けてください!お母さんが、お母さんが!」
すごい勢いで俺に助けを求める女の子。10歳ぐらいの小さい女の子が指さす方向に
足と肩から血を流して座り込んでいる女性がいた。
俺はすぐさま、探査魔法をかけ周りを確認して
ゴーレム馬車を下りて女性の傍へ駆け寄る。
女性は左肩と左足を切られて、血を流していたがまだ生きている。
俺はすぐに治癒魔法をかけて傷を治し、
アイテムボックスから取り出したポーションを、女性に飲ませた。
この飲ませたポーションは、増血効果のあるポーションなので血を流しすぎているこの女性には効果があるだろう。
その後、傍で俺の治療を見ていた女の子にどこに行こうとしているのか聞くと
「『ナルバ村』に行く途中だったの」
その答えに俺は、2人をゴーレム馬車に乗せて村へ引き返していった。
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