第13話 完成、解体魔法
冒険者ギルドの受付へ、『ボア』の納品証明書を提示すると
ジェシカさんが応対してくれた。
「え~と、はい、ボアの納品依頼の完了を確認しました。
では、恭也さん。ギルドカードを出してください」
俺は、ジェシカさんに言われたとおりにギルドカードを出すと
カードを受け取ったジェシカさんは、すぐに処理するとカードを返してくれる。
「ではこちらをお返ししますね、今お金を持ってきますからお待ちください」
俺は、立ち上がろうとしているジェシカさんを止めると
「ちょっと待ってください、ジェシカさん。
実は『解体』を習いたいんで、依頼を出していいですか?」
「はい、ではこちらで依頼書を出しておきますね。報奨金はいくらにしますか?」
「いくらぐらいが相場なんですか?」
「そうですね『解体』を習うなら、銀貨3枚ぐらいで大丈夫だと思いますよ」
「では、その値段でお願いします」
「わかりました。では、ボアの依頼のお金持ってきますね」
ジェシカさんが受付を離れて、しばらくしてお金の入った袋を持って帰ってくる。
「え~と、ボア1体銀貨5枚で買い取りですから……
全部で銀貨60枚のお支払いになりますね」
俺は、銀貨60枚を受け取るとすぐに確認してアイテムボックスの中へ入れる。
「ありがとうございます」
「…でも、便利ですよね『アイテムボックス』……私も覚えようかな」
「覚えるなら『魔力操作』をしっかりやってからだと、簡単ですよ」
「覚えた人の意見として、参考にしますよ」
そう言うと、ジェシカさんは笑顔になってくれた。
俺は久しぶりに自分の家へと戻ってきた。
半月ほど開けていたことになるから、家の掃除をと思い【クリーン】をかけまくる。
あとは、裏手にある井戸にかけて。畑を見に行く。
「よしよし、ジャガイモは順調に育っているな」
このままいけば、3・4か月で収穫できそうだ。
さて、お腹空いたし今日は何を作るか…そういえば、天然酵母ができたんだった。
これでパンを作ってみようか。
俺はキッチンへ移動して、パン作りを始める。
リンゴから作った『天然酵母』を利用し、小麦粉をこねていく。
1次発酵に、2次発酵をすませて生地が一回り大きくなるまで置いておいて
あとはオーブンへ……ってオーブン無いんでそこは魔法でチョチョイのチョイ。
はい、出来上がり!
めちゃくちゃ端折ったけど、実際は3時間ぐらいかかった…
でも、焼き立ての柔らかいパンを食べて
「はぁ~、幸せの味だ…」
パンは3個ほど食べれば、お腹いっぱいなので残りはアイテムボックスの中へ。
アイテムボックス内は、時間経過がないのでいつでも焼き立てのパンが!
本当に便利だな、『アイテムボックス』
次の日『解体』の依頼がどうなったのかギルドへ行くと、ジェシカさんに依頼は
ギルドが受けてくれたそうで、すぐに解体所で教えてくれるそうだ。
ジェシカさんに、どうしてこんなに面倒なことを?と聞くと
実は『解体』を習う人はめずらしくて、たいていはギルドの解体所を利用するらしい。
また『解体』を習ったばかりの人のものは、商品としての価値が低く
実際『解体』を本業にする人は弟子入りが一般的だそうで、俺みたいに習う人は
知識として知るためだそうだ。
う~ん、『解体魔法』のためにとは言えないな…
解体所に行くと、昨日のおじさんが俺を待っていた。
「おう、来たな。依頼人」
おじさんは、笑顔で俺を歓迎してくれたようだ。
「はい、今日はよろしくお願いします」
「よし、さっそく始めるぞ。まずは2体『解体』するから見て覚えろ。
そのあとで、何体か『解体』をしてもらって終了だ」
「わかりました」
おじさんは俺を解体をする場所に案内すると、さっそくボアの解体を始めた。
「いいか、まず獲物を倒したらすぐに血抜きをすること。
血抜きをすることで、肉の鮮度を………」
俺は最初から説明してくれるおじさんの話を、しっかりと聞いている。
解体作業をしながらの説明は、わかりやすかった。
そして、俺の解体を見ながらどこが悪いか、
どうすればいいかを懇切丁寧に教えてくれる。
そして、すべての授業が終わったのが2時間後だった。
晴れて、俺のスキルに『解体』が加わっていた。
俺はさらに知識を深めるため、ギルドの2階にある資料図書館に行き
どんな魔物や獣も、どう解体できるかの知識を吸収していく。
これで『解体魔法』が、創造できるはずだ。
ギルド2階の食堂でお昼をすませて、俺は村の外の森へ狩りに出かけた。
創造したばかりの、解体魔法を試すために。
森の中に入り、探査魔法で獲物を探す。
…『ボア』発見!でも、大きさがいつもと違うな…
俺は忍び足で獲物に近づくと、違和感がよく分かった。
デカい、とにかくデカい。通常『ボア』の大きさは3メートルぐらいだ。
しかし、今目の前にいる個体は2倍の6メートルはある。
俺はすぐさま【ガイアチェーン】で動きを封じようとしたが、逃げられる。
「こいつ、速い!」
そして、ボアはすぐに俺に向かって突撃をしてくる。
「くっ!」
何とかよけることができた、ボアはそのまま木に激突して木を薙ぎ倒すと
ゆっくりと方向転換する。
しかし、俺はこの時をチャンスととらえた。
「【フォレストネット】!」
ボアの周りにある木に絡まっていた蔦が、一斉にボアに絡まっていく。
ボアは雄叫びを上げながら、蔦を引き千切ったりしていく。
「よし、【ガイアチェーン】」
蔦に絡まれてその場で暴れているボアに、今度は地面から土の鎖が絡まってくる。
そして、蔦と土の鎖に絡まれて身動きの取れないボアが鼻息荒く俺を睨む。
「すごい気迫だな…」
俺は感心するも、これも自然の摂理と割り切って【アイスランス】を
ボアの頭から心臓へ向けて、突き刺し命を奪う。
目に光を失ったボアは、力が抜けてそのまま地面に崩れ落ちた。
俺は、なぜか手を合わせてしまう。日本人なんだな……
そして、この魔法を使う。
「『解体魔法』【アパール】」
呼び方は適当にしてみたが、魔法はイメージが大切だったらしく
6メートルのボアは、きれいに解体されアイテムボックスへ送られた。
「…超便利!」
読んでいただきありがとうございます。