第12話 町から村の道中で
次の日、白いコートをなびかせて『ナルバ村』への街道を歩く俺。
今回は買い物のし過ぎで、
乗合馬車の出発時間に遅れてしまい、乗れなくなってしまった。
しょうがないので、来た時と同じく歩いて村に帰っているのだ。
誰にもすれ違わない街道、寂しいな~
時々探査魔法を使って、歩いていると森の中から魔物の反応があった。
「この反応は、『イノシシ系』だからボアだろうな…」
これは狩るしかないな。ボアの肉はおいしいし、高く売れるからな。
……村に帰ったら、ギルドで解体のやり方を習うかな。
で、その解体を魔法にしてしまおう。
実は、俺のスキルの『魔道の神』には創造魔法というものがある。
『魔道の神』
あらゆる魔法を習得可能なスキル。
このスキルを持つものは、種族魔法も習得可能であるため、
エルフしか習得できない『精霊魔法』、
竜人しか習得できない『竜語魔法』、
ドワーフしか習得できない『鍛冶魔法』、
魔族しか習得できない『暗黒魔法』、
天使などに認められたものしか習得できない『聖王魔法』
そして、勇者のみが習得を許された『勇者魔法』など、習得可能になるのだ。
また、習得にはかなりの努力と魔力を必要としているものもある。
その中の1つに『創造魔法』がある。
この『創造魔法』、実は何でもかんでも創造すればできるものではない。
想像するには、その理、手順を知っておかないといけないのだ。
今回の『解体』を魔法で創造しようとするなら、
解体の手順を知らないと魔法にならない。
だから、ギルドで『解体』のやり方などを教えてもらおうというわけだ。
世の中は、便利のようで便利にはできていない。
魔法も絶対というわけではないのである。
…めんどくさい!
そんなことを考えながら、森に入ると獲物を発見した。
「解体を教えてもらうには、獲物が必要だよな~」
俺は探査の魔法を使い、
他に何かいないか確認すると【ガイアチェーン】を使いボアを捕縛、
動けなくなったところへ頭の上から下顎へ【アイスランス】で止めを刺すと
ボアに【クリーン】をかけて、アイテムボックスの中へ入れる。
「俺より大きなボアも、動けなければ敵じゃないな…」
俺は再び、森を出て街道に戻り村を目指す。
途中、何度か街道から森の中へ探査の魔法をかけてみると
いろんな魔物が引っ掛かる。
しかし、俺が狙ったのはボアのみ。
実をいえば、ボア以外の倒し方が思いつかなかった。
例えば『ゴブリン』、こいつらは複数でいるのが多かった。
最少でも3体だ。
1対多数は、戦ったことがないのでパス。
例えば『フォレストウルフ』、
こいつらは複数で行動しているものしかいない。
多くて10頭。
…無理だな。
複数と戦うなら、
せめてもう一人いないと戦えないと思ったので『ボア』のみとなった。
この『ボア』は基本1体だ。そのため狙いやすかった。
俺が村に到着するころには、アイテムボックスに『ボア』が
12頭、入っていた。
『ナルキド』の町を出て5時間ほどで、『ナルバ村』に到着する。
お昼を過ぎていたので家に着くなり、お昼を食べて冒険者ギルドへ向かう。
冒険者ギルドで、解体を教わるためだ。
『冒険者ギルド』に到着して中へ入ると、ジェシカさんが受付をしていた。
どうやらジェシカさんもやっと帰ってこれたようだ。
俺は正面の依頼書を眺めて、『ボア』の買取の依頼書があったので
ついでとばかりに受けておくことにした。
「いらっしゃい、恭也さん」
ジェシカさんは、いつもと変わらずに俺にも挨拶を笑顔でしてくれる。
「こんにちは、ジェシカさん。これをお願いします」
俺が差し出した依頼書を見て、カードを受け取りすぐに受理。
そして、俺の恰好に気が付いた。
「あら、恭也さん。そのコートはどうしたんです?」
「実は今朝まで『ナルキド』の町にいたんですよ。
このコートは昨日買ったものです」
ジェシカさんは俺の上から下まで見て、頷きながら、
「うん、治癒魔法が使える恭也さんにその白いコートはお似合いですね」
「そうですか?ありがとうございます」
「このカードはお返ししますね、『ボア』の狩りはこれから行かれるのですか?」
「いえ、この村に帰ってくるまでに『ボア』を狩りましてね。
それを買い取ってもらおうかと。
そしたらこの依頼があったもので受けてみました」
「村までの道中に『ボア』が現れたんですか?」
「探査魔法で、街道から森の中を調べて『ボア』を見つけて狩ったんですよ」
「…そんなやり方があるんですね」
「それで『ボア』は、どこへもっていけばいいですか?」
「それなら、ギルドの裏手に解体所がありますのでそちらにお願いします」
「わかりました」
俺がすぐに移動しようとすると、ジェシカさんが止める。
「ああ、待ってください。
解体所にいったら証明書をもらってきてくださいね」
「証明書ですか?」
「はい、解体所の人にいえばわかりますからもらってきてくださいね」
「わかりました。では、また後できます」
ギルドの裏手にある解体所に行くと、暇そうにしている人たちがいた。
「あの、解体をお願いしたいんですが証明書を作ってもらえますか?」
解体所のおじさんは、俺が声をかけると対応してくれた。
「おう、解体だな。獲物は何だ?」
「ボアです。それと解体を俺に教えてもらいたいんですが…」
「見学か?もし、『解体』を習いたいなら、
ギルドで依頼した方がいいぞ」
「そうなんですか?わかりました、あとで出してみます」
「で、ボアはどれくらいあるんだ?」
「はい、全部で12体です」
「……よくそんなに狩れたな」
「運が良かったんですよ。
それで、どこに出せばいいですか?」
おれば場所を聞くと、おじさんは解体所の奥に招いてくれる。
「こっちに冷蔵所があるから、こっちに出してくれ」
俺は12体のボアを冷蔵所に出すと、証明書を受け取る。
「確かに12体受け取ったぞ。それと、これが証明書だ」
「ありがとうございます」
俺は、証明書を持ってギルド受付へと戻った。
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