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4.

その後様々な変身動作を試してみたがこれといった変化は見られなかった。次は…、と考えているとモナさんがベッドで半身を起こしていた



「…ふわぁぁ…あら?おはようパルナ。早いね」

「…(コクコク)」

「…さて、着替えて朝食の準備でもしますかね。そういえばもう無いのね尻尾」


言われてから気がつく。昨夜変身動作を試していた時は意識しなくても勝手に動きに合わせて動いていたので特に気にならなかったが今は姿がない。しかしお尻辺りに感覚はあるのでなくなったわけではないのだろう。そう頭の中で結論付けて顔を上げるとモナさんが着替えている瞬間だった。…べつに子供だから見ても(在るのかわからないけど)警察に突き出されることもないだろうから見ていてもいいのだが見られている方は不快感を覚えるかもしれないのでスーッと体の向きごとゆっくり逸らす。

着替え終わったモナさんは化粧などはせずに頭の上で髪を一括りにする。ここには鏡が無いので自分の姿を確認することができないが、慣れた様子で手で軽く触れて確認し準備を終えた。



「さ、パルナも着替えましょうか」


まさかの展開。すっかりこのままでいくのかと思ったが駄目なようだ。

身ぐるみ剥がされる。と言ってもワンピース1枚着ていただけなのでバンザイしただけである。そして裸になった姿を確認する様に全方向から見ていたモナさんが後ろから近付く。…なんか自分だけど自分の身体ではないものを触られている感覚が肩甲骨辺りと尾骨辺りにする。


「あら、アザができてる。これはハート、と…羽?下のほうは尻尾の先端がハート型だったからだろうけど、昨夜は羽なんて…見えなかっただけかな?」


ふむ、羽か。蝙蝠かな?梟かな?蝉かな?どれでもいいけどこれで空は飛べるのかな?念願…って程ではないけどなかなか興味深いな。前世ではゲームで遠距離、しかも空中からの攻撃ポジションを務めていたので同じ様なことが…出来なくはないかも知れないが他の面子が居ないともの足りない気がする。…そういえばどうなったんだろうか?いつも(・・・)一緒・・だっただけに何かぽっかりと空いてしまったような気になる。あの頃が懐かしく思う。時には研究について楽しく話したり、時には意見が合わずに喧嘩をしたりした。個性的な奴の集まりだからな…ん?たしか俺のゲームの時の種族は…吸血鬼だったはず…あぁ、そうだ。もしかしたら今の俺はゲームの頃の情報を引き継いでいるのかもしれない。そうだとすれば俺が喋ることが出来ないのは種の問題だろう。

そもそも吸血鬼とは死者が蘇った、謂わばゾンビのようなものの上位の存在だ。そしてゾンビは元の生物とは異なるものであり生活していくための血液や空気が必要ではなくなった。そうなると声を発するための空気を体内から出すことが出来ないため、結果喋ることができない。という設定だった。ゲーム内ではチャット機能があった為激しい戦闘時以外では意思の疎通に影響は少なかったが、問題は別にあった。それは、《魔法》である。このゲームでは魔法は声に出して発動補助を行う方法と、頭の中などで唱え、声に出さずに発動させる方法とがある。前者の方法では声の大小に関係なく、他の装備やスキルなどによる増幅、ペナルティを無いものとすると本来の威力100%の力を発揮する。しかし後者の方法となるとそれにペナルティが加わることとなる。頭の中で唱える場合は本来の威力の40%〜70%程しか発揮出来ないらしく、しかも簡単な魔法限定であり、大規模な広範囲殲滅型などには適用されず発動することができないらしい。威力の割合はその魔法本来の威力と術者のスキル、レベル、経験なども加味されて決まる。つまり同じ技でも、ある程度の経験がある者とその魔法系のスキルレベルが最高値の者とではアバターの情報によって威力が異なるということである。…俺の場合は遊撃に近い立ち位置だったので相手の注意をそらす為に攻撃をしていたが、脳内詠唱をする事により本来短い時間で唱えられる域を超えた量の魔法を弾幕のように張り巡らせその全てを一点集中で突撃させていた。そのひとつひとつは弱い威力でも、塵も積もれば山となる戦法とコンボ数による攻撃力補正で小規模殲滅型魔法と化し俺の十八番魔法、ゲーム内での二つ名となった。


---ナル・シオ『導化師』

---固有魔法ユニークマジック:幼精達(フェアリー)狂乱舞(カーニヴァル )

一瞬のうちに生み出された多彩な光の球は無邪気な子供の様に縦横無尽に動き廻り対象の逃げ場を無くし合図と同時に一斉に突撃していく。顔の半分を仮面で覆い素の無表情と嘲るような笑みを浮かべながら数多の光球を操る姿はまさしく道化師であった


俺が現実逃避しているうちに身体検査と着替えが終わり、モナさんに手を引かれて部屋を後にした。その後大きな鍋で数十人分のスープを作るモナさんの手伝いをして完成する頃に次々と子供たちが起きてきた。起きてきた子たちはみんな着替等の身支度を済ませていた。その後それぞれの食器にスープを分けてパンとスープという質素な感じの朝食を食べてそれぞれが出て行った。どうやらここで住んでいる多くの子たちがそれぞれ役目を持ち、近場で働かせてもらったり、まだ小さい子達の面倒を見たりしているらしい。


「さて、私達も行きましょうかね」


と、俺たちも出かけるらしく、片付けと昼食の準備を終えてから院を出るのであった。モナさんと手をつないで外へ出る。閃光とも言うべき強い太陽の光が視界を奪いそして暗転。世界が闇に包まれた



♢♦︎♢♦︎♢♦︎︎♢




「パルナ……大丈夫?」

暗闇の中、どこからか声が聞こえる。聞こえてきたその声に「うん(・・)」と応えると視界に光が入る。そこは昨日の今日で見知った天井がある部屋だった。首を動かし周りを見ると見知らぬ長い金髪の女の人が、寝ているベッドに腰掛けていた。

「おはよう。私はクロントでモナの幼馴染なの。よろしくね」

「…うん」

「モナは今居ないけど話そうよ。私は一応これでも教師をやっているからね何か力になれるかもしれないよ?」


そう話しかける女の人改めクロさん。紅い瞳でしっかり俺の目を見てそう言うと不思議と安心する様な慈愛の笑みを浮かべる。

–が、惑わされてはいけない。胸につっかえる様な違和感がそう言っている。コレは違う。聞こえてくるのは2人分の呼吸音、香るのは甘いベリー系の香り、感じるのは少し硬めのベッドの感覚。



…コレは違う。罠である。そう考え女を見ると歪んでいた。いや、空間そのものが歪んでいた。そんな奇妙な空間で一言


「ーー失せろ。」


小さな一言。その一言を反響させた空間は崩壊していった



♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



ゆっくりと目を開けていく。そこには先と同じ様な紋様の天井があった。扉が開き、いくつかの足音が近づいてくる。


「あら、起きてたの。まあ、それにしてもたいしたものよ私の幻術を破るなんて」

「……(パクパク)」

「これは現実だから声は出ないのね」


先程の夢はこの女による幻術だったらしい。姿は同じで金髪紅目のグラマラスボディ。俺ににっこりと笑かけている。しかし目は笑っておらず奥に隠された紅の瞳は獲物を見つけた獣の様に俺を捕捉している。何もされていないが身震いが…


「パルナが怯えているでしょう!「イテッ」…まったく」

「まあまあ、何か分かったんでしょ?クロン?」

「ええ、この子は魔法に耐性があるから多分魔法が使える様になるね。そして私の幻術を受けている時の思考はかなり冷静だった。鑑定晶で表示された年齢ってのは内面の、精神的なものとは関係ないんだと思うね。正直とても興味深い…ちょっと失礼するよ」


クロさんの顔が徐々に近づいてくる…ってアレ?コレハキスカナ?ナニカハイッテクルンダケド?なんだか身体が温かくなったような…暫時されるがままにしていると「くっ⁉︎」と言う声で急に離れていった。モナさんが襟首を掴んでズルズル引きずっている。呆れた様な表情をメクスさんと同じ様に浮かべている。…力強いな–



【情報解析完了。種族:魔人種】

【種族情報により、《変身:魔人種淫魔族サキュバス》が解放されました。】



へぇ、魔人種なんだ。確かにこの魅惑の身体は淫魔族サキュバスらし–




【種族情報統計によりシキ・ファンタールが覚醒しました。】



【シキ・ファンタールの覚醒による経験値と新たな情報により情報統計が為され、以下の種族が解放されました。

獣人種、鬼人種、精人種、竜人種、鳥人種 】



【種族情報統計により《獣人種:兎人》フェクサ・ロイブが覚醒しました。】


【種族情報統計により《精人種:森霊族》シュノ・ゲトナーが覚醒しました。】


【種族情報統計により《精人種:地霊族》メイリン・ディーナーが覚醒しました。】





–––––––誰も知らぬどこかで鎖の弾け飛ぶ音が響いた

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