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僕は脇役がいいっ!  作者: 至木三芭
第一話"脇役の受難"
4/8

3

あれから一週間ほど経った。

修達とご飯を食べない時は岩田や、事情を知って協力を買ってくれた竹本が一緒に食べている。あれ以降手紙は一日おきに朝と放課後の二通来ていて、段々と僕のことに詳しくなっていく相手に内心、恐怖心が芽生え始めていたりする。



「しかも、今日は一人か……」



岩田とここへ向かう途中、岩田は先生に突然拉致されてしまい一人でラーメンを啜っている。

周囲を見回すと、知り合いらしきものは誰もいない。

一息ついて、今日の朝に来てた手紙を取り出す。



「奏多くんへ。

昨日は校庭で筒井くん達とパンを食べていたね。私もたまたま校庭にいたんだよ。これって運命的だよね。

やっぱり焼きそばパンの方が好きなのかな?

最近、いろんな貴方が知れてとても楽しいよ。なんでこうしなかったのかってちょっと後悔してる。

でも、前向きに考えてどんどん貴方を知って行こうと思うからよろしくね。

勇気と準備が済んだら貴方に好きって言いに行くから。またね」



内容がずいぶんフランクになって来た。僕はキミの文通友達か何かと。

しかし、なんだろう……違和感があるな。今日のこれは昨日来てたにも関わらず来てるし、法則性があるわけじゃないのかな? それに、一日前の昼のことを書くのもなんか変だし……あと、なんか見落としてる気がする。



「気持ち悪いな」



この感覚は好きじゃない。問題がわかりそうでわからないあの気持ち悪い感覚だ。

くしゃりと手紙を握り潰してポケットに入れる。

それからラーメンを食べようとして――



「あれ、小柳くん一人?」



「わっ……た、竹本?」



「はーい、竹本凪だよ。で、一人なの? 岩田くんは?」



竹本は僕を驚かすのが好きなのだろうか。結構な頻度でびっくりさせられてる気がする。

ああ、この表情は確信犯だ。意地悪く笑ってる。



「先生に拉致されてった。だから一人だよ」



「なるほど……大丈夫なの?」



「さっきの竹本のドッキリでちょっと大丈夫じゃなくなったかも。心拍数上がったから」



「とりあえず大丈夫みたいだね」



見事に僕の嫌味をスルーして向かいの席に座る竹本。まぁ、心配はしてくれてるようなのでそこはありがたく思っておこう。



「私もドタキャンされちゃってねー。うーん、インスタントな付き合い続けてるとこういうことがあるからちょっと怖いんだよねー」



小さな包みから二段重ねの弁当箱を取り出して広げながら自虐なのかどうなのかわからない言葉を続ける竹本。

どうでもいいんだけど、女子ってああいう小さな二段の弁当箱を好むよね。量的にはそんなに少なくないと思うんだけど、やっぱり見た目なのかな。



「まぁ、そしたら小柳くんのとこに避難すればいいかなー。ね?」



「別に構わないけど、友達くらいちゃんと作ってみたらどう? 悪いものじゃないと思うけど」



「おお、恋愛ごとじゃないからポジティブだね! うーん、悪くないかもしれないけど、今からそこまでさらけ出せる人なんていないかなぁ。大学行ったら考えてみるね」



「ずいぶん先の話だね……」



いつもよりテンションの高い竹本は、珍しく周りも気にせず本性大暴露だ。いつもの淑やかさ重視でも明るさ重視でも女子力重視でもないらしい。



「なら彼氏とかは? 演技するに当たって便利になると思うけど?」



「んふふ、じゃあ小柳くんがやってくれる? 彼氏役」



「やだよ。なんで僕なのさ」



「それはこっちのセリフ。なんで私のこと知らない人に頼まなきゃいけないのよ。私なら確かにやる気になればできるだろうけど、変に勘違いされても困るし友達たくさんの理由話してまで彼氏役とか作りたくはないかなー。と言うか、小柳くんにだけは言われたくない」



それもそうか。恋愛が面倒とか言ってる人間が言うことじゃなかったな。



「ごめんごめん。確かにそれは間違いないね」



「わかればいいのです。あ、小柳くんなら彼氏役やらせてあげてもいいよ? ストーカー対策にも上手く行くかもしれないし」



「相手の手紙がエスカレートして、僕の恐怖心が肥大してきたら考えるよ」



「……怖いの?」



「そりゃあね。どんどん僕に詳しくなってくし、どこにいるかもわからない。私立高校にも関わらず金髪な近藤先輩よりよっぽど怖いよ。わりと洒落抜きでね」



それを上手く内側で抑えてるんだから、僕もなかなか演技派かもしれない。修が鋭いから悟られないようにしてるだけだけど、今度演劇部にでも顔を出してみようか……やめよ。合わなすぎる。



「……それなら、さっきの話を本当に――」



「あら、面白そうな話をしてるじゃない。奏多」



少し真剣な顔で、演技モードなのか素なのかわからない表情のまま、何かを言おうとした竹本の声を割るようにして僕の後ろから声が聞こえた。

気持ち、睨むようにして僕の背後を見つめる竹本さん。対して僕には声の主は誰かわかっていた。そもそも、僕を名前で呼ぶ女子なんてこの学校には二人しかいない。ついでに言えばその二人には同じ血が流れている。



「こんにちは、盗み聞きは良くないと思いますよ。三浦先輩?」



振り向いた先には、僕の最後の幼なじみがにっこり笑って立っていた。



「……生徒会長とも知り合いなんだね、筒井くん繋がり?」



「違うわよ、演劇部次期部長さん。私の名前は三浦杏奈(みうら あんな)。ほら、あなたのクラスに同じ名字の子がいるでしょ? 妹が仲良くしてるみたいね。あの子がお世話になってるわ」



「三浦……まさか、優奈ちゃんのお姉さんですか?」



「そう! 聡い子は好きよ。ふふ……」



「びっくりです。あまり似てなかったので気がつきませんでした」



そうかなぁ。確かに髪の毛とか、肩甲骨くらいまでのを上げて一つに結っててしかも焦げ茶っぽい色の優奈に比べれて杏奈……さんは腰くらいまでの黒髪を真っ直ぐに垂らしてるし、身長や体型も優奈の方が高かったり良かったりするそうだけど、似てないってほどだろうか。優奈ほどって言うけど、優奈は幼なじみとか初恋の人の贔屓目(ひいきめ)抜きにしてもモデルくらいはできそうな容姿とスタイルだし、そこまででなくても杏奈さんだって綺麗に整ってる体型になってるし、容姿もむしろ優奈より男の人には人気ではないかと思う。高嶺の花に思われて手を出されなそうだけど。

と言うか、竹本も容姿は全然負けてない辺り今地味に僕は凄い場所にいる気がしてきた。



「そうなのよー。優奈ってば無駄に胸とか身長とかおっきくなっちゃってね。たまに私が妹に間違われるくらい……って悪かったわね妹に発育で負けてて!」



「ま、まぁ優奈ちゃんは凄いスタイルいいから……」



「ねー。あれにべったり惚れられてる筒井が羨ましいと思わない? ね、奏多」



「いや、僕はあまり……」



意地の悪い人だ。この人は僕が優奈を好きだったことを、かつて修に抱いてたコンプレックスを知っててこういうことわざと言ってくる。

そういう人なのだ。支持率ほぼ100%で生徒会長になって、学力は三年間一位をキープ。運動をやらせても得意なスポーツなら助っ人できるくらいにはこなせて、社交性も優奈顔負け。むしろ優奈と違って今からそこそこ大きな場所でスピーチやらやってるせいかそこも優奈より凄いかもしれない。

そんな完璧を絵に描いて文字に著したようなこの人は、意地が悪い。自分の楽しみの為に人のトラウマを平気で抉ってくる。



「ふーん、そうなんだー」



「なんですかその含みのある返しは。微笑ましく見守ってるんですよ僕は。

先輩こそ、あまりからかうようなら修にあることないこと言いますよ?」



そして何を隠そうこの人も修ハーレムの一員である。

明言こそしてないけど、修には名字呼びで普段から毒舌だし、これはツンデレ的な照れ隠しなのだろうということで僕の中で完結している。姉妹揃って陥落させるとはさすが修と言わざるを得ない。



「別に筒井に何言われたって何もダメージないわよ。

残念だったわね、奏多」



「む……」



まぁ、人望やいろいろなものを加味しても僕がこの人に勝つ見込みは少ない、か。修も杏奈さんの人となりをわかってるから笑っておしまいだろうし。



「で、何の話? ストーカーなんて単語が聞こえてきたけど」



「えっと――「小柳くん。ストーカーに手紙を送られ続けてるんです」――ちょっと竹本」



「……ふぅん、どんな感じ?」



「……貴方を見てたとか、知りたいとか、わかってあげれるのは私だけとか、よくあるテンプレですよ」



ああ、面倒な人に知られてしまった。竹本はというと、こら、ごめんなんて口パクで言ってウインクするな。可愛いかもしれないけどイラッともするぞ。



「奏多、放課後生徒会室で話を聞かせなさい。あまり面白い話じゃないから知恵を貸してあげる」



「え、けど……」



「拒否権はないわよ。いいわね」



「……はい」



「よろしい。じゃあ待ってるからね?

あと、名字に先輩付けなんて他人行儀過ぎよ。もっと気軽に呼んで? 敬語も減点ね。それじゃ」



最後の最後に言いたいことを言って僕らのいたテーブルを去っていく杏奈さん。見送って姿勢を戻すと、向かい側の竹本はまだ杏奈さんがいた方を見ていた。



「仲、いいんだね」



「幼なじみだからね。僕じゃなくて修を構って欲しいよ、まったく」



「あの人も筒井くんが好きなの?」



「明言されてないけど、僕はそう睨んでる。結構自信あるよ」



なんたってあの修だからね。不良の先輩すら魅了しちゃうんだから。



「……私は、そうは思えないな。とても思えない」



「竹本?」



ぽつりと何かを呟いた竹本は、いつになく真剣そうな目付きで、演技なのか素なのかわからない声の高さで、もういなくなった杏奈さんが立っていた場所を見つめていた。

てなわけで優奈のお姉さん参上。

この作品最強のキャラです。一話目も中盤に差し掛かってきましたので、ここで杏奈さん出して動き出す感じです。

各章がラノベ一冊の感覚で進んでいきますので、一話はもう中盤から折り返しくらいの予定です。

暇潰しになれば幸い、面白いと思っていただければ幸せにございます。

ではでは、これからもよろしくお願いします。

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