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四話

 夏休みが明けてまず始めにある大きなイベントが体育祭だ。

 もちろん現在は十月なので、そんなイベントはもう終わっている。

 それだというのにわざわざ、そんな話題を掘り返す人物が一名。



「そういえば体育祭ってどうだったのですか?」



 金井さんである。

 そりゃ、聞かれれば答えないと駄目だろうけど・・・早奈英、そんなに露骨に睨むんじゃない。



「早奈英無双・・・いや夢想だとでもいうべきか」



 ああ崇、崇だ。

 俺は真実はいうまいとオブラートいやこの際そんなものではなく、鉄の箱にでもいれてあげようとしていたのに!

 俺は悪くない。俺はわるくな・・・だからなんでそこで俺を睨むですか早奈英さん?

 保護者的な扱い?そうなの?そうなのね!?



「そうなんですか。はー見たかったな」



「ああ。百メートルでこける早奈英。リレーでこける早奈英!女子の見世物のダンスでもこける早奈英!!前日にあれだけ意気込んでたのに、空しいものさ」



「たぁかしぃ!!黙って聞いておれば!えぇい!年貢の納め時?いや違う!切腹せい!!腹切れぇ!!!」



 早奈英が暴走モードに入った。

 どうも、体育祭の話は早奈英に聞いてはいけないワードに新しくリストアップされたみたいだ。

 それに感づいてか、二人のアホなやりとりを微笑ましく見守る金井さん。



「ごめんね。朝から騒がしくて」



「あ、暴れる姉さん・・・画像?いや動画!!」



 あ、この子かなりの筋金入りかもしれない。

 




「というわけでいつも通りやれよ」



 朝のHRも終わり、先生は教室をあとにする。

 


「それでどういう話だったわけだ?」



「なんか今日は、文化祭特化日らしくて通常の授業はないみたい」



 相変わらずのごとく朝の先生の話を聞かない崇。



「授業がないのは助かるな」



「そうだね」



「あのー」



 そろそろという効果音が似合いそうな感じで、視野の外からから金井さんの手が視野の中へと入ってくる。



「どうかしたのか?桜」



「確か、文化祭って十一月の後半でしたよね?」



「うん。そうだね」



「まだ十月の半ばなのに丸一日、文化祭のためにつかったりするんですか?」



 その質問に崇と顔を見合わせる。そのうち、崇が閃いたように手をたたく。



「ああ、そうか桜は転校生だったな」



「そういえばそうだったね」



 すっかり忘れていたが、金井さんは何を隠そう転校生だったな。

 俺らの反応をみて金井さんは、苦笑いを浮かべている。ごめんね金井さん。



「それじゃまず、因縁を話さなければいけないな」



「い、因縁ですか?」



「桜は如月学園を知っているか?」



 崇の声が低くなる。めんどくさいモードになったなこれは。でも面白いは面白いし、しばらく傍観しておくかな。



「桜・・・如月学園というのをしっているな?」



「はい。確か超が付くお嬢様学校ですよね?あ、そういえばこの学校の近くでしたね」



「うむ。その通りだ。その如月学園と我が如月高校には浅からぬ因縁があるのだ」



「あれ?名前がほぼ一緒・・・?」



「うむ、いいところに気が付いたな桜。実はな如月学園のところの校長は俺たちの校長のお兄さんなのだ!」



「う・・・そ!?」



 意外といい感じに対応してくれる金井さんに、崇は気を良くしたんだろう。

 多少はしていたジェスチャーが大きくなる。今までの比じゃないほどに。



「そうなのだ!この二人は血にまみれた、涙なしには聞けない理由がぁいたい!!」



 崇のテンションが最高潮になったところで、早奈英の拳骨が飛ぶ。

 お約束、といえばお約束なのだが毎度の如くかなり鈍い音がするので見てるこちらからすれば、可哀想に見えたりもする。



「桜に変なこと吹き込まないの」



「え!?嘘なんですか!?」



「兄弟はあってるけど、そこから血にまみれたり涙なしには聞けないとかないから」



 そ、そうなんですか・・・。とかなり真剣にショックを受けている金井さん。なんか、ごめんね。



「ま、簡単に話せばうちの高校とむこうの高校の校長先生は兄弟なのよ。二人とも負けず嫌いで、尚且つ兄弟だけには負けられないとか思っているの」



「あ!それで私たちはその兄弟げんか的なものに巻き込まれてしまった、というわけなんですね」



「そ。そういこと」



 実に簡単な話だ。崇は昔からそういう簡単な話に、変に着色をしたがる。聞いてるこちら側からすれば楽しくて何よりなんだけど、やっぱり困ったものだ。



「体育祭みたいに失敗しないようにしないとな」



「んごらぁ!崇てめぇ!!」



 ほんとに、困ったもの。

 

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