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二話

 翌日、昨日あんなに濡れたのが悪かったのか、ものの見事に風邪をひきました。風邪っていっても熱は微熱だから学校へは行かなきゃ。熱は八度以上ないと休めないのが家の掟。


「それでマスクか」


 俺が咳をする横で、いつも通り平常運転で歩く崇。元気そうで何よりです。


「しかし、何で風邪をひいた?昨日は傘あったしあまり濡れてないのだろう?」


「えっと、それは」


「そうか!女の涙に濡れたのかぅ!?」


「じゃかしい!」


 崇が妙なことを口走っているところに、早奈英のチョップが冴え渡る。


「おはよう早奈英」


「おはよう竜也。あんたなんだって風邪ひいたの?」


「あーえっと、それは……」


「「それは?」」


「昨日、帰りにこけちゃって」


 あはは、と苦笑いするも早奈英は大爆笑で、崇は笑いを堪えている。


「あんた!こけたって!目に浮かんで!ぷっアハハハハハハハ!!」


 女の子だからもっと笑いは上品にだぞ、早奈英。


「っつ!だからあんたは顔に出過ぎ」


 ベシッと早奈英に叩かれるが、いつもよりも何倍も優しい。


「とにかく、お大事に」


「ありがとう早奈英」


「今日は遊びに行けないな」


 やれやれとメガネをクイッと上げる崇。


「ごめん崇。とにかく二人ともとにかく今日は俺に近づかないように」


 と言ったら二人とも驚いた顔をして足を止める。


「ど、どうしたの?二人とも?」


「どーしてそんな結論になるのよ?」


「まったくだ」


 今度は二人とも溜め息をつく。今日は妙に息がピッタリだな二人とも。


「いや、だって風邪うつしたくないし」


 そしてまた溜め息をつかれる。そんなについたら幸せがどんどん飛んでくぞ二人とも。


「竜也みたいに貧弱じゃないわい私は」


「早奈英に同じく、だ」


「でも、二人にうつしたら悪いし」


「「でももヘチマもない!!」」


「ご、ごめんなさい」


 二人から怒鳴られた。二日間での怒鳴られ記録更新だな。

 ヒューっと風が吹き抜ける。

 十月も半ばだが、今の体感的にいえばもう秋通り越して冬に到達した感じがしまする。


「あー確かに今年は寒いよね」


「まったくだ。もうホッカイロの出番がやってくるとはな」


「風邪ひいてるから尚更寒いよ」


 なんて他愛のないことを三人で歩きながら話すいつもの日常。


「あ、あの山澄やまずみくん!」


 そして、朝から早奈英か崇が告白されるのもほぼ日常となってきた。今日は崇の日らしい。


「ふむ。皆、それじゃまた後で」


「ほいほーい」


「後でね~。はっくしゅ!」


 崇は律儀に告白をちゃんと聞いて、後腐れがないように断るらしい。


「律儀なことだよねー」


 と、言ってる早奈英もなんやかんや言ってそういう振り方をしているらしい。


「なんだよ?その娘をなま暖かく見守るような瞳は」


「いや、早奈英は可愛いなって思って」


「なっ!?おまっ!!それ!!」


 早奈英がわたわたし始めた。しかも顔も赤い。やっぱり風邪うつしちゃったかな?


「あ、あの!牧野まきのさん!」


 おや、今日は崇&早奈英day だったらしい。


「と、とにかくまた後でな!竜也!」


「はいよー」


 今日は珍しく一人になってしまった。そりゃ入学して少しした時は毎日一人になるくらいに早奈英と崇は告白ラッシュだったし、放課後もまた大変みたいだ。

 そういえば、崇は告白のせいで部活に遅刻しますって言ったら先輩と先生が、爆発しろ!!って言ってたなぁ。

 俺達が早奈英を早奈英って呼び捨てでよんだだけでも、爆発しろ!!って言ってたなぁ。

 因みに俺と崇はソフトテニス部で早奈英はそのマネージャー。


「よー。竜也!ってなんだよそのマスク?」


「おはようございます。高梨先輩。風邪ひいちゃいまして」


「おいおい。早く治せよ。うちはただでさえ四人しかいねーんだからよ」


 そうなのだ。我が如月高校ソフトテニス部は四人しか部員がいないのだ。


「まー。牧野ちゃんがしてくれれば試合が出来るんだけどな」


「早奈英は気分屋ですからね」


「先生は絶対しないしな」


「若いのに何ででしょうね?」


「さぁーな」


 顧問の片平先生は若干二十五歳と若いのだがやるのはコーチ的なものだけで試合には絶対参加しない。


「ところで牧野ちゃんと崇は?」


「あー恒例行事こくはくナウです」


「爆発しろ!!」


 なんでもこの高梨先輩、爽やかイケメン男子なのだが崇が入ってきて崇にファンの子をごっそり取られたらしい。(本人談)


「おほ?珍しいツーショット」


「おーおはよう涼介」


「おはようございます。相田先輩」


「おっはよー二人とも」


 元気系の申し子、高梨先輩曰く運動バカの相田先輩が俺達の肩を抱くように間に入ってくる。


「なになにー?何の話してたの?」


「早奈英と崇は朝から恒例行事こくはくナウって話をしてました」


「「爆発しろ!!」」


 高梨先輩、二回はあれじゃないですか?


「みなまで言うな竜也!」


 先輩達にまで心を読まれるあたり、顔に出過ぎなんだなと実感する今日この頃。

 因みに相田先輩もファンをごっそり崇に取られたとかなんとか。(高梨先輩談)


「おりょ?竜也は風邪でもひいた?」


「らしいぞ」


「すいません」


「謝るなっての。しっかり治せよ」


 軽く相田先輩から頭を撫でられる。


「そういう先輩が好きです」


「「俺もだよ!!牧野ちゃん!!」」


「嘘です」


「ぷっ」


 いつの間にか俺の横にいた崇が吹き出す。


「「黙れこの、えっと、崇!!」」


「頭捻っても愚痴出てこないんですか?」


「た、崇」


 不敵に笑いながら崇が先輩達を追い詰める。因みに早奈英は笑いを堪えるのに必死である。


「「覚えてろーい!!」」


 先輩達は半泣きで校門向かって走りさっていく。


「まったくあんまり苛めちゃ駄目だよ」


「仕方ないだろ。うちの先輩は面白いんだから」


「崇に同意」


 思わず溜め息が出る。早奈英は未だに笑ってるし。


「ちゃんと敬ってあげないと駄目だよ二人とも」


「「へいへーい」」


「はぁ」


 風邪が悪化しそうで怖い朝になりました。



 学校について、朝のホームルーム。今日の風邪は熱があまり出ないのに具合はひどく悪いという質の悪いパターンだった。今日は大人しくしておこう。


「というわけで今日は転校生を紹介しようと思う」


 転校生?また珍しい。普段ならもう少し反応するけど今日はきついのでボーッと座って置くのがやっとなんです先生。


「うだうだ前振りはいらないな。んじゃ入ってこい」


 ガララと扉が開いて入ってきたのは、金髪の外国人の人だった。


「はいはーい野郎共うるさい。それじゃ自己紹介頼むぞ」


「は、はい。えっと金井桜かねいさくらです。金髪は地毛でイギリスと日本のハーフです。よろしくお願いします」


 ヒューヒューと歓声が上がる。(主に男性)

 そんなに美人さんなのかな?美人なら早奈英がいるのに。きつくてそれどころじゃないけど、でもどっかで聞いたことのある声……!?


「うぉ!?どうした?鞍上?」


 驚きで椅子から転げ落ちてしまった。ついでに落ちた拍子にマスクもずれた。忘れもしない。いや、忘れることすらできない。だって、あの子は!


「あ!昨日の人!!」


 鼓動が早くなる。これが俺と金井桜との衝撃的な二度目の出会い。

 俺達の関係は新たなるステップへと動き始める。

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