3人のイレギュラー
「あーあ。雨降ってきちゃった」
授業も終わり家に帰ろうとし、玄関に行った直後、ポツリポツリと雨が降ってきた。天気予報では降水確率35%。雨が降らないと思い傘を持って来なかったが、降り始めてしまった。今日に限ってスクールバックの中には折り畳み傘はない。
桜丘が近いから鏡夜をまって傘に入れてもらおうか?それがいい。さあ、小雨のうちに桜丘に向かおう。そして、私は雨のなか走り出した。
*
「鏡夜ー、お願い!傘いれて!」
了承を得る前に勝手に彼の傘に入る。一瞬嫌そうな顔をしたが、諦めたようにため息をついた。鏡夜の近くにいた男子達がはやしたてる。
「その子、鏡夜の彼女か?」
「美男美女でお揃いだぞ!」
何か男子達が言うたびに「違う!」「こいつは俺の姉ちゃんだ!」などと否定する。別にそんなに否定しなくてもいいのに…。
「こんなことも考えて傘を二本持ってきた」
そういって彼はカバンからお折り畳み傘を出した。わー!用意周到!流石、私の双子の弟だ。
「ありがとー!鏡夜大好きっ」
そして、彼に抱きついた。この子は攻略対象ではないからこんなことをしても大丈夫。何かのフラグがたっても困りはしない。
鏡夜も私と同じ銀髪でスカイブルーの瞳だ。そして、彼も本当はこのゲームに存在しないはずの人。桜花は本当は一人っ子なのだ。鏡夜だって私と同じで本当の『早乙女鏡夜』ではなく別の人が『早乙女鏡夜』の中には入っただけかもしれない。いつか近いうちに聞いてみよう。きっと彼も私と同じ、イレギュラーな存在だから。
「あれ?あの男の子。傘持ってないのかな?」
店の軒下にいた黒いランドセルを背おった小学4年生くらいの男の子。困ったように可愛い顔をしかめながら雨と睨めっこをしている。
「坊や、どうしたの?傘ないの?」
「うん。忘れちゃった」
「じゃあ私のあげるよ」
はいっと傘を渡し、この人の傘に入ってくからといって、鏡夜の傘に入った。
「ただのビニール傘だから返さなくていいよ」
「いいのか?見ず知らずのガキに傘あげて」
「いいのいいの」
「お前そんないい人キャラだったか?」
お節介は桜花姉ちゃんだけにしろよと小声でいう。帰ろうとしたらお姉さんとさっきの男の子が呼ぶ声がきこえて振り返る。こっちに来てと手招きして私を呼んでいた。
「どうしたの?」
「ねえ。君って早乙女雲雀でしょ?この世界のことで困ったことがあったら僕に聞いて。攻略対象の好感度とか。僕は君のナビゲーターみたいなモノだから!」
「え?ちょっと何言ってるの…」
好感度?ナビゲーター?この男の子は私のことをすべて知っているように話す。
「僕の名前は片桐伊織。君が僕に会いたいと思えばいつでも会えるから。じゃあね!」
そういって不思議な少年、片桐伊織はどこかに行ってしまった。
あの子はこの世界がゲームだと知っている。しかし、そんな事がわかっても驚いたりしない。だって自分も知っているから。
それにしてもあの子がいてよかった。これで好感度調節などチェックしながら生活していける。これで誰にもフラグを立てさせないわよ!
私はスキップをして鏡夜のもとへ向かった。
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「今度の『雲雀』お姉さんは無事にハッピーエンドを迎えれるのかな?」
イレギュラーが三人、雨の中帰っていった。
主要人物が全員出揃いました!雲雀が高校に入学してから女子キャラ増やす予定