☆粘着系男子の話し
鳳先輩視点の話です!
最近気になる少女がいる。
桜花の妹の早乙女雲雀だ。初めて会ったのは妹に弁当を届けたとき。僕が中学生にかこまれているところを撫子が僕だと気がついて雲雀ちゃんを連れて僕のところまできた。僕には撫子に弁当を届ける目的ともう一つ、雲雀ちゃんに会う目的があった。最近桜花が「妹がまだ進路を決めてなくて困ってる」「早く弟離れさせないと…」など、愚痴をいっているからその雲雀という少女に興味を持った。
顔も知らない少女だが桜花と姉妹なのだからきっと美人で可愛いのだろうと思い、撫子が彼女を連れてきた時は、その時はまだ彼女の名前を知らなかったが一目でその少女が雲雀だとわかった。
姉と一緒のスカイブルーの瞳と、正反対の銀の髪。そのときは、僕のことをすごく警戒していた。ふわふわした雰囲気で警戒心が強い。まるで小動物のようだ。
この子と話してみたいと思いメアドと電話番号を渡した。こんなにも自分から渡したいと思ったことは初めてだ。
そして僕はその後、上機嫌で教室に帰った。
*
二回目に彼女と会ったのはそれから三日ほど後のことだ。
雲雀ちゃんが高等部にいたので、声をかけようと思ったが、隣に同級生らしき男子がいたのでやめておいた。それにしてもこの男子見たことがあると思ったら、この間、生徒会が止めた喧嘩をしていた篠崎奏ではないか。もしかして、雲雀ちゃんを人質にとって生徒会に仕返しとか!?もし本当にそうだったらまずい。このままあとをつけていこう。
彼らが向かったのはやはり生徒会室だった。しかし、今日は生徒会の仕事はないので皆部活や家に帰ったはずだ。
用事が済んだのか、雲雀ちゃんと篠崎が戻ろうと後ろを向いた。なんと2人は親しげに話しているではないか。ただの生徒会に用があっただけでほっとしたが、新たな問題が発生した。2人は親しげにはなしている。何故か、胸がチクンとしたのだ。そして僕は、偶然を装って雲雀ちゃんたちに歩み寄った。
「雲雀ちゃん!どうしたのかな?こんなところで」
「げっ…鳳先輩…」
げっと言ったことは聞こえなかったことにしよう。彼女は篠崎の背中に隠れてしまった。僕はなにかしただろうか?僕は優しく篠崎に微笑んでいたつもりだが向こうは睨んできた。雲雀ちゃんとの関係を問いただしたところクラスメイトで隣の席のただの知り合いだと。ただの知り合いが一緒に生徒会室へくるのだろうか?怪しい。
雲雀ちゃんはこの空気を変えようと僕に話しかけてきた。
「お…鳳先輩。お姉ちゃんっていつ頃ここに来ますか?」
彼女が自分から話かけてくれた!僕は嬉しすぎて、自分の顔が満面の笑みになっていくことがわかる。
「桜花なら熱が出て早退したと聞いたよ」
さっき熱が出たから帰ると教室で言っていた。
彼女は篠崎の付き添いでここまできたらしい。なんて優しい子なんだ!
この後の予定は無いし、お茶にさそおう。もっと沢山話したい。もっと沢山彼女のことが知りたい。なにかの本で読んだ気がする。こういうことが『恋』なのだと。まだ二回しか会っていないが一目惚れというやつだろう。
断られてしまったが、聞こえなかったことにして、雲雀ちゃんをお気に入りの喫茶店へ連れて行く。…余計なやつもついてきたが。彼女と沢山話せれてよかった。今日はよく眠れるだろう。
*
休日なので出かけてみるとそこにはガラの悪い連中に囲まれた雲雀ちゃんがいた。こんな休日に出会えるなんて運命としかいいようがない!と言ってる暇はない。雲雀ちゃんを助けなければ!
僕は急いで雲雀ちゃんの前に立ち、彼女に殴りかかった拳を受け止めた。間一髪だ。相手の耳元で「この子を傷つけたら殺す」と自分でも出したことのないような低い声でそして気持ち悪いほどの笑顔で言った。笑顔で殺すと言うのも結構きくものだと思った。相手の男たちは蜘蛛の子のように散っていった。
雲雀ちゃんがなにかお礼をと言ったので、お礼なんかいいと言おうとしたが、「今日一日だけ雲雀ちゃんを独占させてください」という言葉が出てきてしまった。慌てていいなおそうとしたが、雲雀ちゃんが少し驚いたようだったけどお礼なら…という感じで嫌そうではなかったので口を閉ざした。
その後は美味しいパスタの店に行った。雲雀ちゃんが先輩先輩と呼ぶものだからついつい名前で呼んで欲しいと言ってしまった。そしたら彼女は恥ずかしがるように桂馬くんと呼んでくれた。その時は無性に録音機が欲しかった。
自分からさそっておいて、女性にもお金を払わせるなんていけない。僕は雲雀ちゃんがお金を出す前に2人分のお金を払って雲雀ちゃんの手を引いて店をでた。彼女は納得がいかないという顔だっかが、僕は気にせず歩んで行った。
少し空が曇って寒くなってきた。雲雀ちゃんをみるとマフラーをしていなくて首元が寒そうだ。僕のマフラーは地味で女の子がするようなマフラーではないが、していないよりはましだろうと思い、僕のマフラーを巻いてあげた。
彼女を家に送って着いたときに、帰ろうとしたら彼女が「助けてくれたのとは別で何かお礼をしなくては…」と言ったので、僕は彼女の額にキスをした。お礼はこれでいいと言うと彼女は頬をりんごのように真っ赤にし、さようならと言って家の中に入って行った。
きっとまだ始まったばかりだが今年で最高な一日だろう。