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乙女ゲー主人公の妹になりました  作者: りり乃
1章 生徒会と先生と受験生
11/16

変人副会長

 すっごく少女漫画とかによくある展開ですが、ガラの悪い人達に囲まれて今ナンパされています。よくあるこういうシーンでは親友と一緒の時とかにナンパされません?1人でクレープ食ってる可哀想な女がいるぜーちょっと相手してやろうってのりでナンパですか?


「ねえ?これから俺たちとどっか遊びに行かない?」

「行こうぜ行こうぜ!1人でクレープ食ってるなんて寂しいだろ?」


 1人の男が、クレープをつかんでいる方の腕をぐいっと引っ張ってバランスを崩し、クレープを新しいスカートの上に落とした。

 せっかく撫子が私のために選んでくれたスカートをよくも…。


「…なさい」

「なになに?聞こえないよ?」

「謝りなさい!」


 ガラの悪い男はポカンとした。今まで一言も話していない少女が突然大きな声を出したからびっくりしたのだろう。


「はあ?何で俺が謝らなきゃいけねえんだよ!落としたのはお前だろ?自業自得じゃねえか」

「あなたが私の腕を引っ張らなければクレープは落ちずにすんだのよ!」


 それから10分ほど言い合いになり、通りかかった客も立ち止まるほどの勢いだった。相手の怒りがピークを迎えた。


「このアマ!ちょっと声をかけてやったからって調子に乗りやがって!」


 いや、全然調子にのってませんけど。男が拳を振り下ろす。これはやばい。殴られる。怖くて目をぎゅっと閉じたが、なかなか痛みは襲ってこなかった。恐る恐る目を開けてみるとそこにいたのは、鳳先輩だった。

 鳳先輩は男からかばうように私の前に立ち、男の拳を受け止めていた。


「鳳先輩!?」

「やあ、雲雀ちゃん。久しぶり。お茶でも一緒にどうかと誘いたいところなんだけど、先にこいつを何とかしないとね」


 先輩。目がとても怖いです。鳳先輩が男に私には聞こえないくらいの声で、何かを耳打ちした。すると、男の顔がみるみる青ざめていき「覚えてろよ!」という、よくある捨て台詞をはいて逃げて行った。…ちょっと何を言われたのが気になります。


「何を言ったんですか?」

「それは秘密だよ」


 人差し指を立てて、口元にあてた。なんとも色っぽい。普段の学校にいるときでも色っぽいのに、これは学校にいるとき以上のいろっぽさあだ。もし、少し前の私なら色気に負けて気絶していただろう。しかし、今は画面越しではない。目の前にいるのだ。油断は禁物。


「助けてくれてありがとうございます。何かお礼を」

「じゃあさ…」









 先輩がお礼でお願いしたことは、「今日一日だけ雲雀ちゃんを独占させてください」との事だった。


「独占って…何をするんですか?」

「んー…。デートとか?」


 デート?デートって恋人同士とかがするあれですか?先輩と私がデート!?絶対ダメ!何かのフラグがたっちゃうっていうか、もう絶対たってる!…仕方ない。今回は諦めるか。助けてくれたんだし、今日一日だけ付き合えばいいんだよね!


「わかりました。じゃあ、何しますか?」

「そろそろお昼だし昼ご飯でも食べに行こうか」

「はい、ちょうどお腹が空いてきたんです!」

「美味しいパスタの店があるんだけど、そこに行く?」

「パスタ大好きです!行きたいです!」


 私達は先輩オススメのパスタのお店へ向かった。






「先輩が美味しいっていうから高級料理店かと思ったけど普通のお店ですね〜」

「僕は高級料理店よりこういう店の方が結構好きなんだよ」


 正直、先輩にお昼を誘われた時はお財布が心配で心配でたまりませんでした。高級料理店に連れて行かれたらお財布の中が空っぽになってしまいます。


「ねえねえ雲雀ちゃん」

「何ですか、先輩?」


 2人が注文を終えたところで先輩が私に言った。


「今日だけさ、先輩って呼ばないで桂馬って呼んで?」

「先輩のことを名前で!?」


 私が先輩に桂馬と?いやいや、敬称はつけないとまずいだろう。桂馬くん、桂馬さん、桂馬様、桂馬殿。1番打倒なのは桂馬くんだろうか。

 先輩がさあさあと私を急かす。


「け…桂馬…くん」

「これからもずーっとそれで呼んで欲しいんだけどなー…」

「?なにかいいました?」

「何にもだよ」


 そう言ってにこりと私に微笑んだ。






 結局、お金は全部先輩が払った。お昼代や欲しかった本の代金は全て先輩が払ってくれた。私が払わせているのではなく、私がレジでカバンの中から財布を探しているうちに先輩が払ってしまうのだ。私がお礼をしているのに、何故か先輩がお礼をしているように見える。

 デートの途中では寒いだろうからといって、先輩のマフラーを私に巻いてくれたり、心配だからといって家まで私を送ってくれた。


「桂馬くん。今日はありがとうございました」

「お礼をしなくてはいけないのはこちらの方だよ」

「助けてくれたのとは別で何かお礼をしなくては…」

「なら、」


 お礼はこれでいいと言って、私の額にキスをした。私の顔が急激に赤くなっていくことがわかる。


「けっ…!桂馬くん!?」

「じゃあね、バイバイ」


 そうして先輩は手を振り帰っていった。


 …変な人だ。


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