お願い・・・
この鬼畜息子…欲しい方いらっしゃいませんか?
「ねぇ…これ…いいかな?」
「いいかなじゃなくって、食べたいから買ってもいいじゃないの?」
「いい?本当にいい?」
ここ数週間の最寄りのスタバの風景。
私も、お店の人もいつもの事とばかりにスルー検定中。
けれども、私達に初めて遭遇する人はびっくりしているだろう。
「頼んでいいから。混んでるから早くしましょう」
「ありがとう、大好きだよ」
お店の人はこらえきれなくなったみたいで噴き出している。
「すっ、すみません。ご注文は?」
「いつものでお願いします」
私は淡々と商品をオーダーする。いつものでイート商品が出てくるってどれだけ通っているんだか。
暫くして、商品がトレーの上にお利口に乗っかっている。
アイスコーヒー以外は息子のものだけどね。
「久し振りに親子でのご来店ですね」
「そうですね。私はこの子達が学校に行ってからのんびりするために来るんですもの」
「えぇ、母ちゃん…ずるいなぁ…。大人って」
「そういう時だけ、人を大人扱いしない。それよりもいい加減恋人つなぎやめなさい」
「ちぇっ。最近、かあちゃん枯れてるからこういうので萌えが補充できると思ったのに」
「…できるか、アホ」
私はいたたまれなくなって息子の頭にげんこつを一発。
「痛いなぁ」
「当たり前でしょう?そういうことは彼女としなさいよ。彼女いない歴2年の癖に」
つい口にしてしまったが、その後で一気に後悔の念が押し寄せる。
「かあちゃんは、彼氏いない歴イコール離婚歴じゃないか」
「そうですよ。それがなんですか?私には愛するダーリンがいるからいいんだもん」
「そうだね。ゲームの中にでしょ。星座の彼氏のほう?それともプリンスさま?」
「そんなこと、ここで暴露することないでしょうが!!この鬼畜息子!!」
「鬼畜は認める。ドエスじゃない」
息子は胸を張って答えるが…十分ドエスだと思うんですけど。
とりあえず、私達はいつも座る定位置に荷物を置いて座ることにした。
「…で、かあちゃんをこうやって公開処刑にして楽しいのかい?」
「うん」
とってもキラキラの笑顔で答えてくれるが、即答ってどうなの?
「ねぇ…、そう言う事をいうと塾のお迎え最寄駅じゃなくて塾に直接行くわよ」
「えぇ…どうしてぇ?僕、何も悪いことしてないよ」
「嘘つけ!!毎回、会いたかったって言ってしがみつくじゃないか。あれは何の罰ゲームだ?」
ちっとも悪ぶっていない息子に向かって私は呆れかえる。
通勤帰りのサラリーマンやお嬢さん方、部活終了後の学生さんが毎回フリーズしているってのに。
「それは仕様ってことで。よろしく」
「どんな仕様なんだよ。ったくもう。絶対ドエスだから」
「だから俺はドエスじゃない」
「十分ドエス」
「かあちゃんだって、鬼畜じゃないか」
ってか、ここスタバの店内。なのに、どうしてドエスとか鬼畜とかそんな単語が朝の9時から飛び交っているんだ?
これだけは、確実に分かる。どこかで絶対に息子…あきらの教育(ってか調教?)を大いに間違えてしまったようだ。
でも…それはどこだろう?幼稚園の頃には既に今のキャラは確立していたはず…。分からん。
「かあちゃん、ねぇ?聞いてる?」
人が必死に考えているって言うのに、息子は私をぶんぶんとゆすっている。
「何?」
振り向いた瞬間に頬に冷たい感触が当たる。
どうして、息子がスタバの店内で頬にキスをしているんでしょう?
何?これ?どんな罰ゲームよ。私暫くここのスタバ…通えない。
「お前…何した?」
「うーん、ほっぺにキス?かあちゃんの肌ってなんかつけてんの?苦いし」
そりゃ、もうすっぴんで外出なんてする訳ないじゃないか。
最低限のスキンケアは老後に備えて…どうして息子相手に語らないといけないんだ?
ってか、今叱っていいところだよね?叱ってもいいよね?
「あ~き~ら~!!」
久し振りの雷を結局落としてしまって、お店のスタッフさんに本当に仲がいいんですね…と言われてしまった。
もう…立ち直れません。
最後のオチ以外は…全てされたことです。
アレ以来…最寄りのスタバに行けません。