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世界一可愛い男の子

また、この天井だ。

何回この天井を見ただろうか。1,2,3,4、……これで7回目か。

6回目は殺された。この顔に惚れた男の彼女さんらしき人に刺された。嫉妬かよ、なんでそんなんで死ななきゃいけなかったんだ。



私はセレスティア・フォン・ヴァルメイユ。私、といっているがこの顔で俺、と呼ぶのは解釈違いらしいので私、と一人称を決定づけている。僕でもいいじゃないか、って?はは、甘いな。一人称が僕だとこの顔のせいで男どもが発情するんだ。大変なんだよ、この顔は。しかし今は7歳児なので僕、のほうがいいだろう。急に私なんて使いだしたらお母様が倒れてしまう。

絹のように細くしなやかな金の髪にサファイアブルーの瞳。金髪碧眼、と4文字で言ってしまえば簡単なのだがその4文字に収まらないほど僕は美しい。自画自賛?この顔になってみろ、これは謙虚に「いやあ、僕なんて、、美しくなんかないです、、」って言ってる方が煽りに聞こえるね。


そして華奢な体。僕のお母様は帝国一の美女として有名だった。艶やかな漆黒の髪に僕と同じ宝石のようなサファイアブルーの瞳。そんな麗しきお母様とこれまた顔が整っているお父様の光り輝く金髪を合わせ生まれた僕はとてつもない美人なわけだ。



コンコン、とドアが叩かれる。

「着替えの手伝いに参りました」

この声は……カーラだ。僕を顔だけの無能な奴だと思っている、くそみたいなメイド。

「入って」

さすがに中身は何年も生きたおじさん、、、ではなく青年なので!立ち回り方は理解しているつもりだ。

しかし…今まで殺されてばっかりの人生だったが、なぜ殺されなければならなかったのだろう?

すべてはこの顔から始まった。言っておくがこの顔が嫌いなわけじゃない。お母様とお父様は僕にやさしい。こういう回帰系の物語は情報収集のため読み漁ったが、なぜか両親が厳しい人が多かった。うちはそんなことない。普通に怒られるし普通に甘やかされる。話が脱線したな。カーラは今一歩目を踏み出した。僕の脳内思考はとてつもなく速いってことが伝わっただろうか。話に戻ろう。そんな両親から受け継いだこの顔は彫刻よりも美しい。美しいものが嫌いな人は少ないのではないだろうか。決していないといっているわけじゃない。そういう人もいるだろうが、僕は美しいものが好きだ。そして何よりも美しい子の顔も好きだ___が、面倒ごとが多すぎる。



1回目は普通に事故で死亡。2回目は僕のファンの女の子に刺されて死亡。3回目は家門没落、変な貴族に嫁がされて性的暴行ののち、死亡。あのおっさん脂肪が本当にえぐかった。あれは300トンあるよ、豚より重いだろう、、、、脂肪と死亡、トンと豚をかけたんだが、、笑ってくれなかったようだね忘れてくれ忘れてください。そして4回目はー、なんだっけな、忘れてしまった。5回目は知識を総動員して偉い人になったけどイケメン皇帝と仲良くなって皇后に妬まれて殺されて、6回目は先ほど言った通り女の子に妬まれて死んだ。

……だいたいは顔が原因である。



おっと、その前に説明しておかなきゃいけないことがあった。

僕はただ、人生を七回やり直しているだけじゃない。

どういうわけか、過去六回の人生で死ぬ間際まで練り上げてきた魔力が、回帰するたびにこの幼い体に「蓄積」されているんだ。

一回目の僕は、ただの無力な子供だった。でも二回、三回と死を重ねるごとに、僕の魔力貯金はとんでもない桁になっていった。

七歳児の体に、国家をいくつも滅ぼせるほどの力が詰まっている。……はっきり言って、持ち主の僕ですら引くレベルの重火器だ。今の僕が本気で指を鳴らせば、この屋敷どころか王都ごと凍らせるなんて造作もない。



だからこそ、目の前でコソ泥をしているメイドなんて、羽虫を潰すより簡単に消せてしまうんだけど……。

ちなみに家門の没落はカーラのせいだったりする。だから僕はこの女を許さない。


「今日もお人形のようですわね、セレスティア坊ちゃま。あなた様のお顔だけは特別なのですから!!お洋服だけでも着飾りましょうねえ」

そういってカーラは宝石など取って僕にどれが似合うか模索しだした。

はい、ストップ。ここで袖に1個、宝石が盗られました。それに僕宝石つけたくないんだけど、重いし。

でもカーラがお母様に坊ちゃまは宝石が好き、って言われちゃったからな。

綺麗なものは好きだしおいてていいんだけどお母様が買ってくれているものをカーラが盗むのは違う。

お母様悲しむかな、、、、。

「カーラ。」

鈴を転がすような、透き通った声。

でも、僕の指先には、今この場で彼女の心臓を止めてしまえるほどの力が、静かに、そして冷たく集まっている。


「……なぁに、坊ちゃま? 今、お似合いになるものを選んで差し上げてますのよ」

カーラは振り返りもせず、盗んだ宝石を慣れた手つきで懐へ滑り込ませた。

あーあ。見て見ぬふりをしてあげるのも一つの手かもしれないけれど、僕の『お母様』が心を込めて選んでくれたものを、汚い手で奪うのは許せない。



「その宝石、ちょっと僕には重すぎるかも」

一歩、踏み出す。

七歳児の柔らかな靴音が、パキリ、と硬質な音に変わった。

僕が歩いた跡が、目に見えないほど薄い氷の膜に覆われていく。




「何をおっしゃいますの、これくらい……って、あら? 急に冷え込んで……」

カーラが肩を震わせ、ようやく僕の方を向いた。

僕は、お母様に見せるような「天使の微笑み」を、ほんの少しだけ冷たく作り替えて、彼女を見上げる。




「ねえ、カーラ。お母様が僕のために選んでくれたものは、すごく大事なものなんだよ?」

ガチガチ、と部屋中の家具が凍りつく。

彼女の懐――盗んだ宝石がある場所から、青白い冷気が吹き出した。

「ひっ、な、なに、これ……熱い、いえ、冷たっ……!?」

「あ、気をつけて。無理に取り出そうとすると、指先から腐って落ちちゃうよ。……僕の力、少し強いから」

サファイアブルーの瞳を細めて、僕は「慈悲深い聖者」のような顔で首を傾げた。

本音を言えば、こんな雑魚に力を使うのも時間の無駄なんだけど。でも、学園に行く前に家の中の害虫は掃除しておかないとね。



「さあ、返して。僕の大切な、お母様からの贈り物」

カーラは顔を真っ青にして、震える手で懐の宝石を床に転がした。

僕はそれを拾い上げると、何事もなかったかのように氷を溶かし、また「無垢な七歳児」の仮面を貼り付ける。

「……ふふ、ありがとう。やっぱり、これがなきゃ」

そういって服にサファイアブルーの宝石をつけ、身を翻してカーラから遠のく。




「ああそういえば、このことはお父様にきちんと報告しとくね」

今までありがとう、カーラ、とほほ笑んで部屋を後にする。

もうカーラの腕は使えないかもしれない。しかしこれで家門を没落させた恨みはちゃらになった。

人生一回分と腕一本は対価が違い過ぎるけど僕は両親に似て優しいから許してあげる

奪われた宝石の代わりに、彼女の「未来」を少しだけ貰ったしね。




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