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異世界より君臨せし魔王 2

 チョコ、とやらを食べて一息ついた我は思いがけずこの人間に洗いざらい全てを吐き出してしまった。


「ふーん、つまりお前は凄い魔王だけど勇者に負けて逃げて来た訳だ。」


「なっ…!戦略的撤退、というやつだ!逃げてなどない!」


「でも戦場から退いたんだよな?」


「…うるさい!」


(なんなんだこの人間の目は!まったくもって腹が立つ!)


まるで害虫をみるような目付き…まるであやつの…

と、嫌な思い出が蘇る。


「そんな事より人間、貴様なぜ驚かぬ。」


「ん?何が?魔王の癖にクソザコって事?」


「き、貴様普通に喋れられんのか?一々煽ってきよって…」


はち切れそうな血管を押さえながら人間を睨みつける。


「はいはい、悪かったよ…異世界の住人って事だろ?」


「チッ…あぁ、そうだ。」

「普通、未知の生物と出会えば多少の焦りも出ようものだろう?」


(それどころかこの人間は落ち着いているどころか、思い返せば我を拾いあげている…)


底知れぬ人間の思惑に頭を悩ませる…

事は放棄した、恐らく考えても無駄である。


「ん~…まぁお前みたいなの、たまにやって来るんだよ、この町に。」


「ほう…それは魔物か?それとも迷い人か?」


「それはわからんが、まぁ色々だよ。」


と、人間は曖昧な表現をする。


「ふむ…と、なればそのもの共に一度会ってみたいものだな…なにか得られるかもしれん。」


「…」


人間は我の事をじっと見つめ、何かを考えているようだ。


「どうした、人間?」


「いや、まぁ…少しな」

「そんな事より…オレの名前はレイってんだ、ちゃんと覚えろよ?」


「はぁ?人間は人間だろうが、どれも同じじゃ!」


「あのなぁ…これから家に住まわせて貰うんだから名前くらい覚えろ?優しくしてやるのも初めのうちだけだからな?」


「住まわせる…?この我をか?」


思いがけぬ人間の言葉に鼻から笑いが出る。


「貴様なんぞの手なぞ借りんでも拠点くらい簡単に用意出来るわ!」


「あぁそう、なら良いんだけどお前身分を証明出来るものもってんの?」


「は?なんじゃそりゃ、我は魔王だぞ?この世界に我の顔を知らんもの…など…」

「しっ、しまった!そうじゃった!」


(完全に失念していた、ここが異世界である事を!)


「ふ、ふん!しかし拠点の一つくらい、奪いとってやるわ!」


「へぇ、出来んの?お前が?その身体で?」


「あっ」


力を失い、非力な姿に変わってしまった事を再確認し、我は膝から崩れ落ちた。


「ころせ…」


「わかった、あやまるから目ぇ開いたまま泣くのやめろ!怖いわ!」


「うぅ…じゃあどうすれば…」


思わず行き倒れ、餓死する我のイメージが思い浮かぶ。


「だから住まわせてやるって言ってんだ、話聞けよ…」


「なぜじゃ、なぜ我に荷担する?」


「まぁ、拾っちゃった以上ちゃんと面倒みなきゃだろ?」


「…?どういう事じゃ?」


あまり理解は出来ないが、凄くバカにされている気分になる。


「…とりあえずだ、お前が自立出来るようになるまでは面倒みてやるよ。」


「なんだか凄く不快だが、背に腹は代えられん…貴様の言う通りにしてやる、人間。」


「だから、レイだってばちゃんと覚えないと飯抜きだからな?」


「…わかった、世話になるぞ…レイ。」


「おう!」


こうして我は変な人間、もといレイに拾われ共に暮らす事になった。

当面の目標は異世界からの来訪者と接触する事。


(この暮らしの始まりを我の復活劇の幕開けにしよう)


「んじゃ魔王、お前の部屋は隣だからな。」


「なんじゃ、ここでもよかろう。」


「ダメだ、ここはオレの寝室!気ぃ失ってたから仕方なくここに連れてきただけ。」


「チッ、面倒くさいのぅ…」


人間に促されるまま、我は隣の部屋へと移動した。


「おいレイ、なんじゃここは。」


「ん?お前の部屋(物置3畳)」


「いやいや!狭いだろ!てか汚ッ!それにベッドは!?」


「は?ねーよ、んなもん。」

「ん~…あぁ、いいもんあんじゃん!ほら。」


そう言ってレイが引きずり出したのは明らかに変色したクッションだった。


「な、なんじゃそれは…汚いし…ゲホゲホ!しかも臭ッ!」


「あぁ、前に使ってたんだけどジュース溢しちゃって…洗うのだるいし捨てるのもなって取っておいたんだ。」


「…お前もしや…」


「ん?何?」


「ええい!我慢ならん!取り合えず掃除じゃ掃除!」


当面の目標が部屋を綺麗に保つことになった。

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