第九十八章:サイクロプスの視界を超えた才能
カラン——
相談所のドアが大きく開いた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く響く、重厚な声。
誠が顔を上げると、巨体の男が入り口に立っていた。
彼の額には、一つだけの大きな目がぎょろりと動く。
れながノートを開く。
「……サイクロプスですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「ボルゴスだ。」
「ボルゴスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ボルゴスは大きな手で後頭部をかきながら、ため息をついた。
「……俺は、一つ目しかない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「一つ目?」
「ああ……普通の人間は二つの目で世界を見て、距離感や奥行きを正確に把握することができる。だが、俺は視界が狭く、細かい作業が苦手だ。」
ボルゴスは、試しにテーブルの上のペンを掴もうとした——が、狙いがずれ、空を切った。
「俺はこのまま、大雑把な仕事しかできないのか? それとも、この目にも活かせる道があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、視覚のハンデを克服しつつ、自分の強みを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ボルゴスが興味を示すように、大きな目を光らせた。
「……何だ?」
「彫刻家になれ!」
ボルゴスの目が驚きに見開かれる。
「彫刻家?」
れなが頷く。
「ボルゴスさんの一つ目の視点は、奥行きを感じるのが難しいかもしれない。 だけど、その代わりに立体を直感的に捉える能力があるかもしれないわ! 細かい作業が苦手でも、大胆な造形を作ることに向いている可能性があるの!」
誠がさらに補足する。
「最近は、巨大なアート作品や、インパクトのある彫刻が人気だしな。お前がやれば、『サイクロプスの芸術』として、多くの人を魅了できるぞ!」
ボルゴスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと手を握りしめた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く拳を固め、決意の表情を浮かべた。
「よし、俺は彫刻家になる!」
結果:サイクロプスの新たな道
数ヶ月後——
ボルゴスは、「モノアイ・アート」という彫刻スタジオを設立し、大胆で力強い石像や木彫を専門に作るアーティストとして活動を始めた。
彼の作品は「単眼だからこそ生まれる独特の視点」と評され、世界中のギャラリーや芸術イベントに招かれるようになった。
「俺の一つ目は、ただのハンデじゃなかった。今は、新しい視点を生み出すためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




