第九十七章:ユグドラシルの守護者と忘れられた森
カラン——
相談所のドアが静かに開いた。
……だが、誰も入ってこない。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
誠が顔を上げた瞬間、室内に爽やかな木の香りが満ちた。
れなが目を瞬く。
「……なんだか、森の匂いがする?」
その時、床の隙間から細い根が伸び、ゆっくりと形を成した。
そこに現れたのは——人の形をした樹木。 背は高く、皮膚は樹皮に覆われ、目はまるで古木の年輪のような模様をしている。
れながノートを開く。
「……ユグドラシルの守護者ですね?」
「その通りだ。」
「お名前は?」
「ヴィズルだ。」
「ヴィズルさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ヴィズルは、ゆっくりと枝のような腕を動かし、ため息をつくように葉を揺らした。
「……私は、森を守るために生まれた。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「森を?」
「ああ……私は、ユグドラシルの一部として、森を見守り、育んできた。しかし、今の世界では、森はどんどん失われていく。 私の存在は、もはや意味をなさないのではないかと思い始めている。」
ヴィズルは手のひらを開き、そこに小さな芽を生やした。 だが、しばらくすると枯れてしまう。
「私はこのまま、ただ消えゆく森とともに朽ちていくのか? それとも、私にできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、森を守るために、新しい役割を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ヴィズルが興味を示すように、木の目をゆっくりと動かした。
「……何だ?」
「環境保護活動家になれ!」
ヴィズルの葉がかすかに揺れる。
「環境保護?」
れなが頷く。
「ヴィズルさんの森を守る知識や力があれば、現代の環境問題を解決するための活動ができるわ! 森林の再生や環境教育を通じて、あなたの使命を続けることができる!」
誠がさらに補足する。
「最近は、世界中で森林伐採の問題が深刻になってるしな。お前がやれば、『生きる森の守護者』として、多くの人々を啓蒙し、行動を起こさせることができるぞ!」
ヴィズルはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと幹を軋ませ、静かに微笑んだ。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、根をゆっくりと地面から引き抜き、自らの意志で歩き出した。
「よし、私は環境保護活動家になる!」
結果:ユグドラシルの守護者の新たな道
数ヶ月後——
ヴィズルは、「グリーン・ガーディアンズ」という環境保護団体を立ち上げ、森林再生や環境教育活動を専門に行うリーダーとなった。
彼の活動は「森そのものが語る環境保護」として話題となり、世界中の環境団体や研究者が彼と協力するようになった。
「私の使命は、ただ森を見守ることではなかった。今は、森を再生し、未来へと繋げるためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




