第九十五章:サンドゴーレムの形を保てない悩み
カラン——
相談所のドアが開いた。
……のではなく、ドアの隙間から砂がザーッと流れ込んできた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く、ざらついた声が響く。
誠が顔を上げると、そこには巨大な砂の塊のような存在が立っていた。姿を作ろうとしているが、少しずつ砂がこぼれ落ち、全身が不安定に崩れている。
れながノートを開く。
「……サンドゴーレムですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「グランザだ。」
「グランザさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
グランザはゆっくりと、崩れ落ちる砂を集めながら言った。
「……俺は、安定した形を保てない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「形を?」
「ああ……俺の体は砂でできている。だから、強風が吹けば崩れるし、雨が降れば流れてしまう。 何かをしようとしても、形が変わるせいでまともに作業できない。普通のゴーレムのように頑丈でいられたらよかったんだが……。」
グランザは力なくため息をついた。
「俺はこのまま、ただ崩れ続けるしかないのか? それとも、俺にもできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、砂の特性を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
グランザが興味を示すように、砂の目をわずかに光らせた。
「……何だ?」
「砂のアート職人になれ!」
グランザの砂がピクリと震える。
「アート職人?」
れなが頷く。
「グランザさんの形を自由に変えられる能力は、砂の彫刻を作るのに最適よ! 砂の城や砂像アートは世界中で人気があるし、大きな大会も開催されているわ!」
誠がさらに補足する。
「最近は、観光地やイベントで砂のアートが話題になってるしな。お前がやれば、『生きた砂のアーティスト』として世界中から注目されるぞ!」
グランザはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと砂を動かし、試しに小さな砂の彫刻を作ってみた。
すると、それは精密なドラゴンの形となり、誠とれなは驚きの声をあげた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、ゆっくりと形を整え、力強く言った。
「よし、俺は砂のアート職人になる!」
結果:サンドゴーレムの新たな道
数ヶ月後——
グランザは、「サンド・クリエイションズ」というアートチームを立ち上げ、砂の彫刻を専門に作るアーティストとして活動を始めた。
彼の作品は「まるで命が吹き込まれた砂の彫刻」と評され、世界中のアートフェスティバルやイベントに招待されるようになった。
「俺の砂の体は、ただ崩れるだけのものじゃなかった。今は、形を変えながら芸術を生み出すためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




