第九十二章:巨大カニの仕事探し
カラン——
相談所のドアが開いた。
……が、それをくぐることはできなかった。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く響く、どこか甲殻がこすれるような音の声。
誠が顔を上げると、ドアの外には巨大なカニがいた。赤黒い甲羅を持ち、鋭いハサミをカチカチと鳴らしながら、入り口からこちらを覗き込んでいる。
れながノートを開く。
「……巨大カニですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「クラウストだ。」
「クラウストさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
クラウストはハサミをゆっくりと動かしながら、少し困ったように言った。
「……俺は、大きすぎる。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「大きすぎる?」
「ああ……普通のカニなら水族館や飲食店で需要があるらしいが、俺はデカすぎてどこにも収まらない。 漁師たちも、『こんなの漁船に乗らねぇよ!』って困惑する始末だ。」
クラウストは大きなハサミをカチカチと鳴らしながら、ため息をついた。
「俺はこのまま、ただ海を彷徨うしかないのか? それとも、この巨体を活かせる道があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、大きすぎる体を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
クラウストが興味を示すように、ハサミを動かした。
「……何だ?」
「海底清掃の仕事をしろ!」
クラウストの目が丸くなる。
「海底清掃?」
れなが頷く。
「クラウストさんの巨大な体と頑丈なハサミを活かせば、海のゴミを回収する清掃活動にぴったり! 特に、大型の廃棄物や沈没船の残骸を撤去する作業では、人間のダイバーでは限界があるから、あなたの力が必要よ!」
誠がさらに補足する。
「最近は、海洋汚染の問題が深刻になってるしな。お前がやれば、『海の守護者』として環境保護団体や海洋学者からめちゃくちゃ感謝されるぞ!」
クラウストはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりとハサミを鳴らし、満足そうにうなずいた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く甲殻を叩いた。
「よし、俺は海底清掃の仕事をする!」
結果:巨大カニの新たな道
数ヶ月後——
クラウストは、「クラブ・オーシャンクリーン」という海洋清掃チームを立ち上げ、海底のゴミを撤去する仕事を始めた。
彼の活動は「海の掃除屋」として話題になり、多くの環境保護団体や研究機関が彼の協力を求めるようになった。
「俺の巨体は、ただの厄介なものじゃなかった。今は、海を守るためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




