第九章:リヴァイアサンの静かな夢
カラン——
相談所のドアが、ゆっくりと開いた。
「失礼する……ここが転職相談所か?」
低く響く、落ち着いた声。
入ってきたのは、巨大な海の主——リヴァイアサンだった。
「でっか!!」
誠が思わず叫ぶ。
ドアの隙間から巨大な青い瞳が覗き込み、申し訳なさそうに首を縮める。
「すまない……本当は体ごと入りたいのだが、どうにもこの建物では難しくてな……」
「そりゃそうだろ!!」
れながメモを取りながら静かに微笑む。
「お名前は?」
「ノアスだ。」
「ノアスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ノアスはため息混じりに答えた。
「……海を支配するのに、疲れた。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「疲れた……?」
「ああ。俺はずっと、海の王として君臨し、嵐を呼び、嵐を鎮めてきた。しかし、それももう飽きた……。戦いは無意味に感じるし、最近の船は俺を恐れない。俺はもう、争うことなく、穏やかに生きたいのだ。」
れなが静かに頷く。
「つまり、海の中で優雅に生きられる仕事がしたいってことですね?」
「そうだ。」
誠が顎に手を当てて考え込む。
「うーん……海の主だからな……水の中でできる仕事……」
れなが何かを思いついたように、目を輝かせた。
「水族館の名誉館長とかどうですか?」
ノアスの目が驚きに見開かれる。
「水族館?」
「そう。海の中を支配するのではなく、海の魅力を伝える仕事です。水族館の目玉として、お客さんにその姿を見せるとか、海の生態系を守るための活動をするとか……」
誠がさらに続ける。
「しかも、お前クラスの生き物がいる水族館なら、めちゃくちゃ人気が出るぞ! なんなら、お前の名前を冠した水族館を作るのもアリだ!」
ノアスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと口を開く。
「……それは、良いかもしれない。」
そして、深く頷いた。
「俺は戦うために生まれたと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。海の素晴らしさを伝える道を歩んでみよう。」
誠が満足そうに笑う。
「よし! リヴァイアサン・アクアリウムの誕生だ!」
結果:リヴァイアサンの新たな道
数ヶ月後——
ノアスは、巨大な水族館「リヴァイアサン・アクアリウム」を開設した。
その圧倒的なスケールと、海の神秘を伝える展示は多くの人々を魅了し、大成功を収めた。
「俺はもう、戦わない。だが、ここで新たな使命を果たしている。」
手紙には、そんな言葉が綴られていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。