第八十九章:ティアマトの時代遅れな神話
カラン——
相談所のドアが開くと、圧倒的な威圧感が室内を満たした。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く響く、重厚な声。
誠が顔を上げると、巨大な多頭竜がそこにいた。それぞれの頭が異なる表情を持ち、見下ろす視線には威厳があった。
れながノートを開く。
「……ティアマトですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「ティアマトで十分だ。神話の存在に、別の名は必要ない。」
「ティアマトさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ティアマトは大きく首を振った。五つの頭がそれぞれ違う方向を向き、時折、意見がぶつかるように唸りを上げた。
「……私は、神話の存在だ。だが、時代が変わり、私のような存在はただの伝説となった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「伝説?」
「ああ……かつて、私は恐れられ、崇められた。だが、今の世界では誰も私を恐れず、私を知る者すら少ない。私はこのまま、忘れ去られていく運命なのか? それとも、私にできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、過去の存在にならないために、新しい役割を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ティアマトの五つの頭が一斉に誠を見た。
「……何だ?」
「神話テーマパークの顔になれ!」
ティアマトの目がわずかに輝く。
「テーマパーク?」
れなが頷く。
「ティアマトさんの神話としての存在感と、多頭竜というインパクトを活かせば、神話を体験できるテーマパークのメインキャラクターになれるわ! 来場者に直接、神話の世界を伝えられる最高の仕事よ!」
誠がさらに補足する。
「最近は、歴史や神話をベースにしたテーマパークやVRアトラクションが人気だしな。お前がやれば、『生きる伝説』として話題になること間違いなし!」
ティアマトはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、五つの頭が一斉に頷いた。
「よし、私は神話テーマパークの顔となろう!」
結果:ティアマトの新たな道
数ヶ月後——
ティアマトは、「ティアマト・ワールド」という神話体験型テーマパークのメインキャラクターとなった。
彼の存在は「神話の世界が現実に蘇る体験」として話題となり、世界中の歴史ファンや観光客が訪れる人気スポットへと成長した。
「私の伝説は、ただの過去ではなかった。今は、新たな形で未来へと続いている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




