第八十七章:悪魔ベルゼブブの忌まわしき力
カラン——
相談所のドアが不気味に軋んだ。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
誠が顔を上げると、黒いマントをまとった悪魔がそこにいた。彼の周囲には無数のハエが飛び交い、不快な羽音が部屋中に響いている。
れながノートを開く。
「……ベルゼブブですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「バエルだ。」
「バエルさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
バエルは静かにため息をつくと、羽音がひときわ大きくなった。
「……俺は、ハエを操る力を持っている。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「ハエ?」
「ああ……かつては、疫病の象徴と恐れられた。人々は俺を悪魔と呼び、災厄の化身として忌み嫌った。だが、今の時代、そんな力は役に立たない。むしろ、嫌われるばかりだ。」
バエルはマントを翻すと、腕を広げた。そこには無数のハエが群がっている。
「俺はこのまま、ただ人々に嫌われ、遠ざけられるしかないのか? それとも、俺のこの力を活かせる道があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、ハエを操る力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
バエルが興味を示すように、赤い瞳を光らせた。
「……何だ?」
「害虫駆除のエキスパートになれ!」
バエルの瞳が揺れた。
「害虫駆除……?」
れなが頷く。
「バエルさんのハエを完璧にコントロールできる能力があれば、害虫を徹底的に駆除する『究極の害虫駆除業者』になれるわ! ハエの動きを操って、狙った害虫を駆除すれば、人間にも環境にも優しい新しい駆除方法が確立できる!」
誠がさらに補足する。
「最近は、農業や都市部でも害虫被害が問題になってるしな。お前がやれば、『悪魔の害虫ハンター』としてめちゃくちゃ重宝されるぞ!」
バエルはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた——いや、不気味な笑いではなく、どこか晴れやかな表情だった。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、ハエたちが静かにまとまり、まるで意思を持ったかのようにバエルの周囲を取り囲んだ。
「よし、俺は害虫駆除のエキスパートになる!」
結果:悪魔ベルゼブブの新たな道
数ヶ月後——
バエルは、「バエル・ペストコントロール」を設立し、害虫駆除や生態系バランスの調整を行う企業を立ち上げた。
彼の駆除方法は「化学薬品を使わない、完全生態系ベースの害虫駆除」として大きな注目を集め、環境保護団体や農業分野からの依頼が殺到するようになった。
「俺の力は、ただの災厄じゃなかった。今は、人間と共存しながら役に立つためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、今度はゆっくりと開かれる——。★




