第八十四章:ヴォイドウォーカーの現実世界での生き方
カラン——
相談所のドアが開いた——いや、開いたように見えたが、何も入ってこなかった。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
声が聞こえた瞬間、部屋の一部がゆがんだ。
誠が顔を上げると、そこには黒い影のような存在が立っていた。全身がうねる闇でできており、実体があるのかすら分からない。
れながノートを開く。
「……ヴォイドウォーカーですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「ネクスだ。」
「ネクスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ネクスは、空間に溶けるようにふわりと揺れながら、静かにため息をついた。
「……俺は、異次元を行き来できる。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「異次元?」
「ああ……俺は空間を自由に移動できる。現実世界の制約を受けない。だが、そのせいで人間社会に適応できない。」
ネクスは影のような腕を伸ばし、机の上のペンを取ろうとした——が、スッとすり抜けてしまった。
「……俺はこのまま、ただ異次元を彷徨うだけの存在なのか? それとも、俺にもできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、空間移動の能力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ネクスが興味を示すように、揺らめく影を持ち上げた。
「……何だ?」
「超高速デリバリーの配達員になれ!」
ネクスの姿が一瞬だけ揺らぐ。
「配達員?」
れなが頷く。
「ネクスさんの異次元を移動できる能力があれば、世界最速のデリバリーが可能になるわ! どんな場所にも一瞬で荷物を届けられるし、渋滞や距離の問題も関係ない!」
誠がさらに補足する。
「最近は、オンラインショッピングやフードデリバリーの需要が爆発的に増えてるしな。お前がやれば、『どこでも即時配達』っていう革命的なサービスができるぞ!」
ネクスはしばらく考え込んだ。そして、影の中でゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、闇がわずかに収縮し、意思を持ったかのように形を整えた。
「よし、俺は異次元配達サービスを始める!」
結果:ヴォイドウォーカーの新たな道
数ヶ月後——
ネクスは、「ヴォイド・エクスプレス」を設立し、世界最速のデリバリーサービスを開始した。
彼の配達スピードは「注文した瞬間に届く」と話題になり、世界中の企業や個人がこぞって利用するようになった。
「俺の能力は、ただの孤独な移動手段じゃなかった。今は、人々の生活を変えるためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




