第八章:バジリスクの孤独
カラン——
相談所のドアが開いた。
「……ここが、転職相談所か?」
低く響く声とともに現れたのは、黒い鱗をまとった大蛇のようなモンスター——バジリスクだった。
「おぉ……またすげぇのが来たな。」
誠が感心しながらバジリスクを見上げる。
れなはノートを開く。
「お名前は?」
「ラシードだ。」
「ラシードさんですね。それで、本日はどのようなご相談でしょう?」
ラシードはしばらく沈黙した後、ため息をつくように言った。
「……俺は、生まれてからずっと孤独だった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「孤独……?」
「ああ。俺はバジリスク……目が合った相手を石にしてしまう。」
れながゆっくりと頷く。
「だから、誰も俺に近づこうとしない。会話もまともにできない。仲間を作ることも許されない……俺は一体、どう生きていけばいいんだ?」
誠が腕を組んで考え込む。
「なるほどな……つまり、人と関わる仕事がしたいけど、どうしても難しいってことか。」
「そうだ。」
ラシードの声には、長年の諦めがにじんでいた。
「だったらさ……その石化能力を活かせる仕事を探すのはどうだ?」
れなが提案する。
「石化能力を……活かす?」
「例えば……石像彫刻家とか。」
ラシードの目がわずかに動いた。
「石像……?」
「バジリスクの石化って、一瞬で相手を石にできるんでしょ? だったら、その力を使って芸術作品を作るってのはどう?」
誠がさらに続ける。
「普通の彫刻家は何年もかけて石像を作るけど、お前なら一瞬で仕上げられる。しかも、めちゃくちゃリアルな作品になるんじゃねぇか?」
ラシードは驚いたように目を見開いた。
「……そんなこと、考えたこともなかった。」
「やってみる価値はあるぞ?」
誠がニヤリと笑う。
ラシードは少しの間考えた後、ゆっくりと頷いた。
「……試してみたい。」
結果:バジリスクの新たな道
数ヶ月後——
ラシードは、天才彫刻家として注目を浴びることとなった。
彼の手によって生み出される石像は、まるで生きているかのようなリアリティを持ち、世界中の美術館からオファーが殺到していた。
「俺の目の力が、誰かの感動につながるとは思わなかった。ありがとう。」
誠とれなは、それを見て微笑み合う。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。