第七十七章:ストーンゴーレムの遅すぎる動き
カラン——
相談所のドアがゆっくりと開いた。
……あまりにも、ゆっくりと。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く響く、石が擦れ合うような重い声。
誠が顔を上げると、そこには全身が巨大な岩でできたゴーレムがいた。動くたびに、石が軋む音がする。
れながノートを開く。
「……ストーンゴーレムですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「グラウドだ。」
「グラウドさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
グラウドは、ぎしぎしと音を立てながら椅子に座ろうと……したが間に合わず、誠が先に話し始めた。
「……なんかすげぇ時間かかってるな?」
グラウドはどっしりと座り込み、ため息のような音を鳴らした。
「……俺は、遅すぎる。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「遅すぎる?」
「ああ……俺は頑丈で力もあるが、動きが遅い。何をするにも、何かを運ぶにも、時間がかかりすぎる。 戦場では盾として役立ったが、平和な時代にこの鈍重さは不要になった。」
グラウドは拳を握りしめた。
「俺はこのまま、ただ動かない石として朽ちていくしかないのか? それとも、俺にできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、スピードが求められない仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
グラウドが興味を示すように顔を向ける。
「……何だ?」
「建築職人になれ!」
グラウドの大きな瞳がわずかに光る。
「建築?」
れなが頷く。
「グラウドさんの頑丈な体と、確実な動きがあれば、石像や建築の構造を支える職人になれるわ! しかも、時間をかけてじっくり作るタイプの建築なら、むしろ丁寧な仕事が求められる!」
誠がさらに補足する。
「最近は、伝統的な石造りの技術が注目されてるしな。お前の力を活かせば、『究極の石職人』として世界中の建築家から頼られるぞ!」
グラウドはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと……本当にゆっくりと頷いた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、重厚な音を響かせながら、力強く拳を握った。
「よし、俺は建築職人になる!」
結果:ストーンゴーレムの新たな道
数ヶ月後——
グラウドは、「グラウド・ストーンワークス」を設立し、石造建築の職人として働き始めた。
彼の技術は「百年、千年と持ちこたえる建築」として評され、世界中の建築家や歴史的建造物の修復チームから依頼が殺到するようになった。
「俺の動きは遅い。だが、それは、確実に永遠を残すためだった。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




