第七十六章:サイクロプスの狭い視界
カラン——
ドアが大きく軋みながら開き、重量感のある足音が響いた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く、どっしりとした声。
誠が顔を上げると、そこには巨大な一つ目の巨人が立っていた。
れながノートを開く。
「……サイクロプスですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「ボルガだ。」
「ボルガさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ボルガは少し落ち込んだ様子で、自分の顔を指でなぞった。
「……俺は、一つ目しかない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「一つ目?」
「ああ……視界が狭く、距離感をつかむのも苦手だ。戦場では力だけでなんとかなったが、今の世の中じゃ、この目のせいでできる仕事が限られてしまう。」
ボルガは肩を落とし、天井を見上げた。
「俺はこのまま、不器用な巨人として生きるしかないのか? それとも、俺のこの特性を活かせる道があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、一つ目の特性を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ボルガが興味を示すように顔を向ける。
「……何だ?」
「彫刻家になれ!」
ボルガの一つ目がわずかに輝く。
「彫刻?」
れなが頷く。
「ボルガさんの立体的な感覚と、細かいディテールを見極める力があれば、優れた彫刻家になれるわ! 一つ目だからこそ、独特な遠近感のある作品が作れるはず!」
誠がさらに補足する。
「最近は現代アートや巨大彫刻の人気が高まってるしな。お前の力を活かせば、『巨人の手による芸術作品』として世界中に知られること間違いなし!」
ボルガはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は彫刻家になる!」
結果:サイクロプスの新たな道
数ヶ月後——
ボルガは、「モノアイ・アートスタジオ」を設立し、巨大な石像やユニークな彫刻を生み出す芸術家となった。
彼の作品は「一つ目だからこそ生まれる独特な遠近感」として注目され、世界中の美術館やギャラリーに展示されるようになった。
「俺の目は、ただの障害ではなかった。今は、唯一無二の芸術を生み出すためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




