第七十三章:ナイトメアの怖がられない恐怖
カラン——
相談所のドアが開いた……と、同時に部屋の空気が不穏にざわめいた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く囁くような声が響く。
誠が顔を上げると、そこには黒い霧のような体を持つ馬の姿があった。 その瞳は赤く光り、影のように揺らめいている。
れながノートを開く。
「……ナイトメアですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「モルフェウスだ。」
「モルフェウスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
モルフェウスはゆっくりと首を振り、ため息をついた。
「……俺は、人々に悪夢を見せる存在だった。 だが、今の人間たちは、もはや恐怖を感じなくなってしまった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「恐怖を感じなくなった?」
「ああ……昔は、俺の見せる悪夢に恐れおののき、飛び起きる者もいた。だが今はどうだ? 映画やゲーム、VRの進化で、人間たちはどんな恐怖にも慣れてしまった。」
モルフェウスは、黒い霧をわずかに揺らしながら続けた。
「俺の力は、ただの娯楽になってしまったのか? それとも、新しい形で役立てることができるのか?」
れなが頷く。
「つまり、悪夢の力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
モルフェウスが興味を示すように顔を向ける。
「……何だ?」
「ホラーゲームのクリエイターになれ!」
モルフェウスの赤い瞳がわずかに輝く。
「ホラーゲーム?」
れなが頷く。
「モルフェウスさんの『人間が本当に恐れるもの』を知っている能力を活かせば、最高に怖いホラーゲームを作れるはず!」
誠がさらに補足する。
「最近はVRホラーが大人気で、没入感のある恐怖体験が求められてるしな。お前が開発すれば、『最恐の悪夢を体験できるゲーム』として話題になること間違いなし!」
モルフェウスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、黒い霧をゆらしながら力強く頷いた。
「よし、俺はホラーゲームのクリエイターになる!」
結果:ナイトメアの新たな道
数ヶ月後——
モルフェウスは、「ナイトメア・スタジオ」を設立し、ホラーゲームの制作を開始。
彼が生み出したゲームは「プレイすると悪夢を見るほどの恐怖体験」として話題になり、世界中のホラーファンが熱狂する人気タイトルとなった。
「俺の力は、ただの恐怖ではなかった。今は、人々の心に残る最恐の体験を創り出している。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




