第七十章:シードラゴンの孤独な海
カラン——
相談所のドアが開いた瞬間、ひんやりとした潮の香りが流れ込んだ。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
静かで深みのある声。
誠が顔を上げると、そこには青緑色の鱗をまとい、しなやかなヒレを持つ龍が立っていた。
れながノートを開く。
「……シードラゴンですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「タイダルだ。」
「タイダルさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
タイダルはゆっくりと首を振り、ため息をついた。
「……俺は、海に住んでいる。だが、それが故に、誰とも関われない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「関われない?」
「ああ……海の中では、俺の力は絶大だ。波を操り、嵐を呼び、潮の流れを読むことができる。だが、人間社会では、俺の力は何の役にも立たない。俺はただ、果てしない海の中で孤独に生きるしかないのか?」
タイダルは悲しそうに、尾をゆるく揺らした。
「俺はこのまま、誰とも関わらずに生きるしかないのか? それとも、俺にもできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、海の特性を活かしながら、人々と関われる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
タイダルが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「ダイビングガイドになれ!」
タイダルの目がわずかに輝く。
「ダイビング?」
れなが頷く。
「タイダルさんの海に関する知識と、水中での優れた能力があれば、ダイバーたちの最高の案内人になれるわ! 安全なルートを知っているし、未知の海域を探検するにはぴったりよ!」
誠がさらに補足する。
「最近は『海洋観光』や『エコツーリズム』が流行ってるしな。お前がダイビングガイドになれば、世界中の人間が安全に海を楽しめるようになるだろ!」
タイダルはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺はダイビングガイドになる!」
結果:シードラゴンの新たな道
数ヶ月後——
タイダルは、「タイダル・オーシャンツアーズ」を設立し、世界中のダイバーたちを案内する仕事を始めた。
彼のガイドは「海の声を聞く者」として人気になり、彼が案内するダイビングスポットは世界中のダイバーたちに愛されるようになった。
「俺の力は、ただ海を漂うためのものじゃなかった。今は、人々に海の美しさを伝えるためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




