第六十八章:カオスビーストの不安定な存在
カラン——
ドアが開いた瞬間、室内の空気がねじれた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
不安定な声が響く。高音と低音が混ざり合い、形を持たない音だった。
誠が顔を上げると、そこには姿が定まらないモンスターがいた。体は絶えず形を変え、色も瞬間ごとに異なる。まるで万華鏡のように、常に変化し続けていた。
れながノートを開く。
「……カオスビーストですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「シュベルツだ。」
「シュベルツさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
シュベルツは自分の姿を見下ろし、ため息のようなものをついた。
「……俺は、まとまりがない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「まとまりがない?」
「ああ……俺は混沌そのもの。形を持てず、何者にもなれず、ただ存在し続けるだけ。人々は俺を恐れ、理解しようともしない。俺に価値なんてあるのか?」
シュベルツは不安定に揺れながら続ける。
「俺はこのまま、ただの『存在し続ける混沌』で終わるのか? それとも、俺に何か意味を持たせる方法があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、自分の不安定な性質を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
シュベルツが興味を示すように、色彩をちらつかせながら顔を向ける。
「……何だ?」
「前衛アートのクリエイターになれ!」
シュベルツの不定形の瞳がわずかに輝く。
「アート?」
れなが頷く。
「シュベルツさんの存在自体が、世界に一つだけのユニークな表現なのよ。形のないもの、色の変わるもの、それらを活かせば、最も革新的なアーティストになれるはず!」
誠がさらに補足する。
「最近は『AIアート』『ジェネレーティブアート』って言って、形にとらわれない芸術が流行ってるしな。お前が作れば、まさに『生きるアート』として世界を驚かせることができる!」
シュベルツはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと色を鮮やかに変えながら微笑んだ。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、形をふわりと変えながら、力強く頷く。
「よし、俺は前衛アーティストになる!」
結果:カオスビーストの新たな道
数ヶ月後——
シュベルツは、「カオス・アート・ラボ」を設立し、世界初の生きたアート作品として展示を始めた。
彼の作品は「絶えず変化し続ける究極の芸術」と話題になり、世界中の美術館やコレクターが彼のアートを求めるようになった。
「俺の存在は、ただの混沌ではなかった。今は、世界を驚かせる芸術となっている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




