第六十五章:エルダーリッチの知識の行き場
カラン——
相談所のドアが開いた瞬間、空気がひんやりと冷たくなった。 ただの冷気ではない。まるで時間が止まったかのような、重い静寂が漂う。
「……ここが、仕事を探せる場所か?」
低く、枯れたような声。
誠が顔を上げると、そこには古ぼけたローブを纏い、骨の手を持つ老いたリッチが立っていた。
れながノートを開く。
「……エルダーリッチですね?」
「その通りだ。」
「お名前は?」
「アルデウスだ。」
「アルデウスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
アルデウスはゆっくりと座り、ため息をついた。
「……私は長く生きすぎた。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「生きすぎた?」
「ああ……私は千年以上の間、あらゆる知識を蓄えてきた。魔法、哲学、科学、歴史……だが、今の人間たちは、もはや私の知識を必要としていない。」
アルデウスは、自分の骨の指をじっと見つめた。
「私はこのまま、時代に取り残されるべきなのか? それとも、私の知識を役立てる道を探すべきなのか?」
れなが頷く。
「つまり、知識を活かしながら、新しい役割を見つけたいってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
アルデウスが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「大学教授になれ!」
アルデウスの深い眼窩の奥で、小さな光が揺れた。
「教授……?」
れなが頷く。
「アルデウスさんの知識は、現代のどんな学者よりも深いはず。なら、それを若い世代に伝える教授になれば、今の時代でも生きた知識として活かせるわ!」
誠がさらに補足する。
「最近は、魔法や歴史を学びたいって人間も増えてるしな。お前が教壇に立てば、『歩く知識の宝庫』として人気爆発間違いなしだぜ!」
アルデウスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、私は大学教授になる!」
結果:エルダーリッチの新たな道
数ヶ月後——
アルデウスは、「アルカナ大学」の名誉教授として招聘され、魔法史や哲学を教えることになった。
彼の講義は「千年の知識を持つ教授」として話題になり、多くの学生が彼の授業を受けるために集まるようになった。
「私の知識は、ただの遺物ではなかった。今は、新たな時代へと受け継がれている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




