第六十三章:ネメシスの仕事の消滅
カラン——
ドアが開いた瞬間、ピリッとした空気が流れ込んだ。まるで、法廷の審判を待つ者のような緊張感だった。
「……ここが、仕事を探せる場所か?」
誠が顔を上げると、そこには漆黒のローブをまとい、鋭い目つきをした女性が立っていた。
れながノートを開く。
「……ネメシスですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「セラフィナだ。」
「セラフィナさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
セラフィナは、腕を組みながら厳しい顔でため息をついた。
「……私は、復讐の女神だった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「だった?」
「ああ……かつては、人間が復讐を求めるとき、私の名を呼び、正義の裁きを求めたものだ。だが、最近はどうだ? 人間社会は法律で整備され、正義は裁判所が決めるものになった。私の役目は、もう必要とされていないのだ。」
セラフィナは険しい表情を崩さないまま、椅子に腰を下ろした。
「私はこのまま、ただの『昔の神話の存在』になってしまうのか? それとも、この時代にふさわしい正義の形を見つけるべきなのか?」
れなが頷く。
「つまり、正義を実現するための仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
セラフィナが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「人権派弁護士になれ!」
セラフィナの鋭い瞳がわずかに光る。
「弁護士……?」
れなが頷く。
「セラフィナさんの正義に対する情熱があれば、社会的に弱い立場の人々を守る法律の専門家になれるわ。 法律が整備されているとはいえ、未だに理不尽な扱いを受ける人は多いのよ。」
誠がさらに補足する。
「最近は、人権問題や不当解雇、ハラスメントに戦う弁護士が求められてるしな。お前が法の力を使えば、まさに『現代の復讐の女神』になれるってわけだ!」
セラフィナはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと微笑んだ。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、私は人権派弁護士になる!」
結果:ネメシスの新たな道
数ヶ月後——
セラフィナは、「ネメシス法律事務所」を設立し、不正と戦う人権派弁護士として活躍するようになった。
彼女の活動は「裁かれるべきものを見逃さない鋼の意志」と称され、数々の社会問題の解決に貢献。世間では「現代のネメシス」としてその名が広がった。
「私の正義は、ただの復讐ではなかった。今は、人々のための剣となっている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




