第六十二章:シーモアの忘れ去られた神話
カラン——
相談所のドアが開いた……というより、水の波紋が広がるような感覚が室内に満ちた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
静かに響く、落ち着いた声。
誠が顔を上げると、青白い肌と流れるような衣をまとい、長い髭を蓄えた壮年の男が立っていた。
れながノートを開く。
「……シーモアですね?」
「その通りだ。」
「お名前は?」
「エルシードだ。」
「エルシードさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
エルシードはゆっくりと座り、ため息をついた。
「……私は、かつて偉大な存在だった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「偉大な?」
「ああ……神話の中で語られ、数多の英雄たちに崇められた存在だった。だが、今はどうだ? 人間たちは私の名を知らず、私の存在はただの伝説になってしまった。」
エルシードは遠くを見るように目を閉じた。
「私はこのまま、誰にも思い出されることなく消えてしまうのか? それとも、この時代に生きる意味を見つけるべきなのか?」
れなが頷く。
「つまり、歴史に埋もれず、新たな価値を持てる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
エルシードが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「歴史博物館の名誉館長になれ!」
エルシードの深い瞳がわずかに光る。
「博物館……?」
れなが頷く。
「エルシードさんの知識は、ただの神話の中のものじゃない。歴史を生きた者だからこそ、伝えられることがあるはずよ!」
誠がさらに補足する。
「最近は神話や古代の知識に興味を持つ人間も多いしな。お前が博物館の館長になれば、世界中の人間が歴史を学びにくるだろ!」
エルシードはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、私は歴史博物館の名誉館長になる!」
結果:シーモアの新たな道
数ヶ月後——
エルシードは、「古代神話博物館」の名誉館長に就任。
彼の知識と語り口は「本当に神話を生きた男」として話題になり、世界中の歴史研究者や神話愛好者が彼のもとを訪れるようになった。
「私の存在は、ただの過去の遺物ではなかった。今は、未来へ知識を伝える者となった。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




