第五十九章:サタンの時代遅れな悪の象徴
カラン——
相談所のドアが静かに開いた……かと思うと、室内の温度が一瞬だけ上昇した。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
重々しく響く声。
誠が顔を上げると、そこには漆黒のローブをまとい、大きな角と鋭い牙を持つ悪魔が立っていた。
れながノートを開く。
「……サタンですね?」
「その通りだ。」
「お名前は?」
「ルシファードだ。」
「ルシファードさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ルシファードは、腕を組みながら、深いため息をついた。
「……俺は、かつて世界中で恐れられる存在だった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「恐れられる?」
「ああ……かつて、人間たちは俺を『究極の悪』として崇め、忌み嫌っていた。だが、最近はどうだ? 人間たちはもはや俺を恐れない。悪魔よりも、企業のブラック体質やSNSの炎上のほうが怖いらしい。」
ルシファードは苦々しげに口元を歪める。
「俺はもう、ただの『昔話の悪役』になってしまったのか? それとも、この時代で新たな悪の形を見つけるべきなのか?」
れなが頷く。
「つまり、人間社会で影響力を持てる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ルシファードが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「巨大広告代理店のCEOになれ!」
ルシファードの赤い目がわずかに光る。
「広告代理店……?」
れなが頷く。
「ルシファードさんのカリスマ性と巧みな話術があれば、人々の心を操るマーケティング戦略家として成功するはずよ。」
誠がさらに補足する。
「最近は、企業が消費者の心理を支配する時代だ! お前がトップに立てば、世の中の流行や価値観を自在に操れる『現代の悪魔』になれるぞ!」
ルシファードはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は巨大広告代理店のCEOになる!」
結果:サタンの新たな道
数ヶ月後——
ルシファードは、「デビルズ・マーケティング」という広告代理店を設立し、その革新的な戦略で業界の頂点に立った。
彼の手がける広告は「人間の欲望を完璧に操る」と話題になり、「現代の悪魔」としてビジネス界で名を馳せるようになった。
「俺の力は、ただの恐怖じゃなかった。今は、世界のトレンドを創り出している。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




