第五十八章:チュパカブラの仕事なき狩猟本能
カラン——
ドアが静かに開いた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低くしゃがれた声が響く。
誠が顔を上げると、そこには痩せた体に鋭い爪、光る赤い目を持つ獣のようなモンスターが立っていた。
れながノートを開く。
「……チュパカブラですね?」
「ああ。」
「お名前は?」
「バスクだ。」
「バスクさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
バスクは鋭い爪をじっと見つめながら、低く唸るように言った。
「……俺は、狩りをして生きてきた。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「狩り?」
「ああ。昔は家畜を襲い、その血を吸って生きていた。だが、最近はどうだ? どこも監視カメラだらけで、狩りをすればすぐに追われる。」
バスクは苛立たしげに牙を剥いた。
「人間の技術が発達しすぎて、俺の狩猟本能は無駄になった。俺に食うための狩り以外の生き方があるのか?」
れなが頷く。
「つまり、狩猟本能を活かしながら、人間社会で受け入れられる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
バスクが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「高級肉専門のシェフになれ!」
バスクの赤い目がわずかに光る。
「シェフ?」
れなが頷く。
「バスクさんの鋭い感覚と狩猟本能があれば、肉の品質を見極めるプロフェッショナルになれるはず。 鮮度、部位の選び方、最高の調理法——狩りの経験を活かして、極上の料理を作れるわ!」
誠がさらに補足する。
「最近はジビエ(野生肉)料理が流行ってるしな。お前の技術を使えば、最高級の肉を扱う伝説のシェフになれるぞ!」
バスクはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと口元に鋭い笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は高級肉専門のシェフになる!」
結果:チュパカブラの新たな道
数ヶ月後——
バスクは、「ブラッド・キッチン」という高級ジビエ専門レストランをオープン。
彼の手がける料理は「肉の本能を引き出す究極の一皿」と評され、ミシュラン三ツ星を獲得するほどの成功を収めた。
「俺の狩りは、ただの生存手段じゃなかった。今は、人間の舌を魅了する芸術になった。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




