第五十五章:河童の川を守る仕事
カラン——
ドアが開いたと同時に、ひんやりとした湿気が相談所の中に漂った。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
少しザラついた声が響く。
誠が顔を上げると、緑色の肌に甲羅を背負った河童が立っていた。
れながノートを開く。
「……河童ですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「カワサキだ。」
「カワサキさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
カワサキは、甲羅をポンポンと叩きながら、ため息をついた。
「……俺、もう川を管理するのが嫌になってきた。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「嫌になった?」
「ああ……昔は、川の水を清めたり、魚を増やしたりして、俺たち河童の役割があった。でも、最近はどうだ? 人間がゴミを捨て、工場が汚水を流し、川はどんどん汚れていく。」
カワサキは拳を握りしめる。
「いくら俺が掃除しても、次の日にはまたゴミが浮かんでいる。……こんな仕事、やってられるかよ。」
れなが頷く。
「つまり、環境を守るための仕事を探しているってことですね?」
「ああ。でも、俺みたいな河童にできることがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
カワサキが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「環境保護団体のリーダーになれ!」
カワサキの目が輝く。
「環境保護?」
れなが頷く。
「カワサキさんの川を守る知識や技術は、人間の環境保護にも応用できるはず。 だったら、環境保護団体を立ち上げて、人間たちと一緒に川を守る活動をすればいいのよ!」
誠がさらに補足する。
「最近は、水質改善やエコ活動に興味を持つやつも増えてるしな。お前がリーダーになれば、もっと本格的な川の保護ができるだろ!」
カワサキはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと口角を上げた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は環境保護団体のリーダーになる!」
結果:河童の新たな道
数ヶ月後——
カワサキは、「カワサキ・リバークリーンプロジェクト」を立ち上げ、各地の川を守る活動を始めた。
彼の発信する「河童の視点で考える環境保護」はSNSで話題になり、全国のボランティアが集まり、川の浄化運動が大きなムーブメントとなった。
「俺の役割は、ただ川を見守ることじゃなかった。今は、人間と協力して川を守っている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★