第五十四章:九尾の狐の魅力の使い道
カラン——
ドアが静かに開く。
「……あら、ここが話題の転職相談所?」
甘く響く声とともに、ふわりと香る高級な香水のような匂い。
誠が顔を上げると、そこには長く艶やかな尻尾を九本揺らす、美しい狐の女性が立っていた。
れながノートを開く。
「……九尾の狐ですね?」
「ええ、その通りよ。」
「お名前は?」
「ユズリハよ。」
「ユズリハさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ユズリハは、美しくしなやかな手で髪をかき上げながら、ため息をついた。
「……私、もう人間を騙すのに疲れちゃったの。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「騙すのに?」
「ああ……昔はね、変幻自在の美貌と話術で、貴族や武将を手玉に取るのが楽しかったわ。 でも最近の人間は、詐欺を警戒しすぎていて、ちょっと近づいただけで疑いの目を向けてくるの。」
ユズリハは尾を軽く揺らしながら、寂しそうに微笑む。
「……私は騙したいわけじゃないのよ。ただ、私の魅力を素直に楽しんでくれる場所が欲しいだけなの。」
れなが頷く。
「つまり、人を惹きつける能力を活かしながら、誠実に働ける仕事を探しているってことですね?」
「あら、分かるじゃない。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ユズリハが興味を示すように顔を上げる。
「……何かしら?」
「トップモデル&俳優になれ!」
ユズリハの目が輝く。
「モデルと俳優?」
れなが頷く。
「ユズリハさんの変幻自在な美貌と話術があれば、ファッション業界や映画業界で絶対に成功するわ。モデルなら、人を魅了する力が活かせるし、俳優ならどんな役柄にもなりきれる!」
誠がさらに補足する。
「しかも、昔みたいに変身して別人にならなくてもいい。お前のそのままの姿が、すでに魅力的なんだからな!」
ユズリハはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと微笑んだ。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれないわね。」
そして、しなやかに頷く。
「よし、私はトップモデル&俳優になる!」
結果:九尾の狐の新たな道
数ヶ月後——
ユズリハは、「人を魅了する妖狐」として、ファッション業界と映画界で大成功を収めた。
彼女の圧倒的な存在感と美貌は「まるで魔法にかけられたようだ」と話題になり、トップブランドの広告や、世界的な映画のヒロインに次々と抜擢された。
「私の魅力は、ただの幻術じゃなかった。今は、世界中の人を夢中にさせている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




