第五十三章:妖怪ぬらりひょんの影の活かし方
カラン——
……いや、気づけばそこに座っていた。
「……よう。」
誠が顔を上げると、相談所のソファに貫禄のある老人の姿があった。
れなが少し驚きながらノートを開く。
「……妖怪ぬらりひょんですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「玄堂だ。」
「玄堂さんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
玄堂は、静かに湯呑を持ち上げながら話し始めた。
「……俺はかつて、妖怪の総大将と恐れられていた。 だが、今はもう……誰も俺に気づかなくなった。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「気づかれなくなった?」
「ああ。かつては、『ぬらりひょんが家に入ると、その家の主になる』と言われていた。だが、最近の人間は忙しすぎるのか、俺が家に入っても気づきもしない。」
玄堂は、ゆっくりと湯呑の中を見つめた。
「それどころか、俺が会議室や会社に忍び込んでも、誰も不審に思わない。……いつの間にか、俺の能力はただの『空気』になってしまったのかもしれんな。」
れなが頷く。
「つまり、目立たなくても影響力を持てる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんな仕事があるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
玄堂が興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「政治コンサルタントになれ!」
玄堂の細い目がわずかに開く。
「ほう……?」
れなが頷く。
「玄堂さんのように、目立たずに場を支配できる能力があれば、政治や企業の裏方として完璧な仕事ができるわ。」
誠がさらに補足する。
「例えば、選挙戦の裏で動いたり、企業の戦略を陰から操ったり……お前みたいな奴がいれば、『影のフィクサー』として絶対に成功する!」
玄堂はしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれんな。」
そして、静かに頷く。
「よし、俺は政治コンサルタントになる!」
結果:妖怪ぬらりひょんの新たな道
数ヶ月後——
玄堂は、「影のフィクサー」として政界・財界の裏側で暗躍するようになった。
彼がアドバイスをした政治家や企業家は次々と成功を収め、「知らぬ間にすべてを支配する男」と都市伝説のように囁かれる存在となった。
「俺は、ただの空気じゃなかった。今は、この世の流れを作る影になっている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び音もなく開かれる——。★




