第五十二章:ヘルハウンドの退屈な日常
カラン——
ドアが開いた……と同時に、ふわりと焦げた硫黄のような匂いが漂ってきた。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
低く響く声。
誠が顔を上げると、そこには漆黒の毛並みを持つ巨大な犬が立っていた。
れながノートを開く。
「……ヘルハウンドですね?」
「そうだ。」
「お名前は?」
「ダグラスだ。」
「ダグラスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ダグラスは、鋭い爪をカリカリと床で鳴らしながら、退屈そうにため息をついた。
「……地獄の番犬として長年働いてきたが、最近は仕事が単調でつまらない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「単調?」
「ああ。昔は地獄の門を守るという使命感もあったが、最近はセキュリティが強化されすぎて、俺の出番がほとんどない。誰も門を通ろうとしないし、俺はただ門の前で座っているだけの毎日だ。」
ダグラスは、尻尾をゆっくりと振る。
「……俺は、もっとアクティブな仕事をしたいんだ。このまま退屈な番犬として一生を終えるのは嫌だ。」
れなが頷く。
「つまり、強靭な肉体と鋭敏な感覚を活かしつつ、もっと動きのある仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんな仕事があるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ダグラスが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「警察犬になれ!」
ダグラスの赤い瞳が輝く。
「警察犬?」
れなが頷く。
「ダグラスさんの嗅覚や戦闘能力は、警察の捜査や救助活動に最適よ。麻薬探知、犯罪捜査、行方不明者の捜索——おそらく、どんな警察犬よりも優秀な結果を出せるわ。」
誠がさらに補足する。
「最近は特殊部隊のK9部隊が注目されてるしな。お前のスピードとパワーがあれば、凶悪犯の追跡や突入作戦でも大活躍間違いなしだぜ!」
ダグラスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと口角を上げた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は警察犬になる!」
結果:ヘルハウンドの新たな道
数ヶ月後——
ダグラスは、特殊部隊の警察犬K9部隊として正式に採用された。
彼の圧倒的な追跡能力と戦闘スキルは、数々の犯罪捜査に貢献し、「伝説の警察犬」と呼ばれるようになった。
「俺の力は、ただ地獄の門を守るためのものじゃなかった。今は、この世界の正義を守るために使っている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




