第五十章:ディアボロスの怖がられない悪夢
カラン——
ドアが静かに開いた。
——ヒュゥゥ……
まるで冷たい風が吹き抜けるような感覚が、相談所を包む。
「……ここが、仕事を探せる場所か?」
低く、どこか不気味な声が響く。
誠がゆっくりと顔を上げると、漆黒のマントをまとった悪魔のような存在が目の前に立っていた。
れながノートを開く。
「……ディアボロスですね?」
「その通りだ。」
「お名前は?」
「ノクスだ。」
「ノクスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ノクスは、ゆっくりと長い爪を絡ませながらため息をついた。
「……俺の仕事は、人間に悪夢を見せることだった。 だが、最近の人間たちはホラーに慣れすぎている。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「慣れすぎてる?」
「ああ……。かつては、俺が見せる悪夢に震え上がり、恐怖で目覚める者が多かった。だが今はどうだ? 俺の作り出した恐怖を、むしろ『最高のエンタメだった!』と評価する者までいる。」
ノクスは頭を抱える。
「……俺は、本当にただ怖がらせるだけの存在でいいのか? それとも、俺の力を別の形で活かせるのか……?」
れなが頷く。
「つまり、悪夢の演出を活かしながら、新しい仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、俺にできることがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ノクスが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「ホラー映画の監督になれ!」
ノクスの瞳がわずかに光る。
「映画……?」
れなが頷く。
「ノクスさんの悪夢演出は、普通の人間では絶対に考えつかないレベルの恐怖体験でしょう? だったら、その才能を活かして、ホラー映画を作るのはどう?」
誠がさらに補足する。
「最近のホラー映画って、どれも似たようなネタばっかりで飽きられてんだよ。でも、本物の悪夢を作れるお前が手がけるなら、まったく新しいジャンルが生まれるだろ!」
ノクスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺はホラー映画の監督になる!」
結果:ディアボロスの新たな道
数ヶ月後——
ノクスは、「悪夢の巨匠」と呼ばれるホラー映画監督として大成功を収めた。
彼の手がけた作品は「観た人全員が悪夢を見る」と話題になり、世界中のホラーファンが恐怖と快感の狭間で震えるようになった。
「俺の恐怖は、ただの悪夢じゃなかった。今は、世界を震え上がらせる芸術になった。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




