第四十三章:ポルターガイストの存在しない悩み
カラン——
……ドアが開いた気がした。
しかし、誰もいない。
「ん? 誰もいないぞ?」
誠が首をかしげると、机の上の書類がフワリと宙に浮いた。
「うわっ!? なんだこれ!?」
れなが冷静にノートを開く。
「……ポルターガイストですね?」
「……その通りだ。」
低く響く声が、空間のどこからともなく聞こえてきた。
誠が少し身構える。
「お、おお、ポルターガイストか!?」
「そうだ。だが、お前たちには俺の姿が見えないだろう?」
れながペンを走らせる。
「お名前は?」
「ヴェールだ。」
「ヴェールさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ヴェールは少し沈黙した後、静かに語り始めた。
「……俺、存在感がなさすぎて、誰にも気づかれない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「気づかれない?」
「ああ。俺は、普通の人間には姿が見えない。声を出しても、風の音としか思われない。物を動かしても、ただの怪奇現象扱いだ。」
ヴェールは、机の上のペンを持ち上げ、空中でクルクルと回転させる。
「……俺がどんなに頑張っても、『おばけが出た!』と怖がられるか、気づかれずに終わるだけだ。」
れなが頷く。
「つまり、姿が見えないことを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そういうことだ。しかし、俺にできることがあるのか……?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ヴェールが興味を示すように、宙に浮いたまま静かに動く。
「……何だ?」
「お化け屋敷の演出家になれ!」
ヴェールの周囲の空気が、わずかにざわめいた。
「お化け屋敷?」
れなが頷く。
「ヴェールさんの能力なら、普通のホラーアトラクションとは桁違いのリアルな演出ができるわ。ワイヤーや仕掛けなしで、本物の幽霊体験を提供できるんだから!」
誠がさらに補足する。
「最近の人間はホラー慣れしてて、ちょっとやそっとの演出じゃ驚かねぇ。でも、本物のおばけが演出するお化け屋敷なら、確実に話題になるだろ!」
ヴェールはしばらく考え込んだ。そして、机の上のペンが小さく回転した後、ゆっくりと降りた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、静かに笑う気配がした。
「よし、俺はお化け屋敷の演出家になる!」
結果:ポルターガイストの新たな道
数ヶ月後——
ヴェールは、「リアルホラーアトラクション」の演出家として活躍することになった。
彼の手がけるお化け屋敷は、「本当に幽霊がいる」と話題になり、絶叫マニアやホラーファンが殺到。
「俺の存在は、ただの怪奇現象じゃなかった。今は、人々に最高の恐怖を提供している。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び誰もいないまま開かれる——。★




