第四十章:セイレーンの歌えない悩み
カラン——
ドアが静かに開き、ふわりと心地よい潮風のような香りが漂ってきた。
「……失礼します。」
透き通るような声が響き、美しい女性の姿をしたモンスターが足を踏み入れる。
誠が目を見張る。
「おお、セイレーンか!」
れながノートを開く。
「お名前は?」
「ルナです。」
「ルナさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ルナは、寂しげに目を伏せながらため息をついた。
「……私、歌えなくなってしまったの。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「歌えない?」
「ああ……セイレーンの声は、人間を惑わせる力を持っている。だから、私が歌うとみんな意識を失ってしまうの。」
ルナはぎゅっと胸元を押さえる。
「私はただ、誰かに歌を聴いてもらいたいのに……私の歌は恐れられるだけ……。」
れなが頷く。
「つまり、歌の力を活かしつつ、人に害を与えない仕事を探しているってことですね?」
「ああ。でも、そんなことが可能なのかしら……?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ルナが驚いたように顔を上げる。
「……何かしら?」
「オペラ歌手になれ!」
ルナの目がぱちくりと瞬く。
「オペラ……?」
れなが頷く。
「ルナさんの歌声には、人を惹きつける力がある。なら、それを舞台で安全に発揮すればいいんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「オペラなら、大勢の観客がしっかりとした環境で聴くから、変に意識を失うこともないはずだぜ! それに、お前の歌は普通の人間には出せないレベルだろ? だったら、世界最高の歌姫になれるぞ!」
ルナはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと微笑んだ。
「……なるほど、それなら私にもできるかもしれない。」
そして、力強く頷く。
「よし、私はオペラ歌手になる!」
結果:セイレーンの新たな道
数ヶ月後——
ルナは、「天空の歌姫」と呼ばれるオペラ界のスターになった。
彼女の歌声は「奇跡の旋律」と称され、世界中の観客を魅了し、劇場は常に満席となった。
「私の歌は、恐れられるものじゃなかった。今は、この声で人々を感動させている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




